母子や男女の仲を幸せにする「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが、自閉症の人の社会性の改善に効果があるという研究成果が相次いでいる。
2015年10月、オーストラリア・シドニー大学のイアン・ヒッキー教授の研究チームが発表した論文によると、3~8歳の自閉症児31人にオキシトシンの鼻スプレーを1日2回、計5週間使用した子どもは、使用しなかった子どもに比べると、コミュニケーション能力、情緒面の安定、行動能力について明らかに改善した。
課題は「どういうメカニズムで脳に働いているか」
ヒッキー教授は「自閉症に薬による改善が有効であることが証明された。次の研究はどういうメカニズムでオキシトシンが脳に働いているかを突きとめることだ」と語っている。
日本でも2015年9月、東京大学医学部附属病院の山末英典准教授のチームの研究が発表された。20~40歳代の自閉症の男性患者20人に対してオキシトシンの鼻スプレーを1日2回、計6週間噴霧して、磁気共鳴画像装置(MRI)で脳活動を調べる臨床試験を行った。その結果、オキシトシンを吸引した後は、一緒にいる人と会話をしたり、はにかんだりするなど、反応が改善した。また、脳の中で人の感情を読み取る働きを担う部分が活発に活動し始めたという。