大阪・伊丹空港で全日空(ANA)の旅客機の操縦席付近に地上からレーザー光が照射されていた事件で、ANA機が地上から300メートル付近に差しかかったときに狙われたことがわかった。
レーザー照射は、目に当たると一時的に視覚が奪われる恐れがある、非常に危険な行為。操縦していた機長らに当たり、あわや大惨事につながった可能性が指摘されている。
どこからどのように照射されたのか・・・
事件が起こったのは、2015年10月17日18時50分ごろ。松山発伊丹行きのANA1648便ボーイング737型機(乗員乗客107人)が、大阪府豊中市の伊丹空港から南東約4キロメートル地点の上空約300メートル付近で着陸体勢に入ったとき、緑色の光線がコックピットの窓にあたったことに操縦士が気づいた。
幸い、操縦士の目などに異常はなく、1648便は予定通り約5分後に伊丹空港に着陸。ケガ人などもなかった。
また11月15日夕には、伊丹空港に着陸しようとした日本航空(JAL)の旅客機の操縦席付近にもレーザー光が照射されていたことも判明した。このときも運行に支障は出ておらず人的被害もなかったが、空港周辺では同様のケースが4月以降に数件確認されているという。いたずら目的か業務妨害かは不明だが、頻繁に起っていたようだ。
ANAは国土交通省大阪空港事務所に報告するとともに大阪府警に相談。府警は威力業務妨害容疑を視野に捜査に乗り出している。
今のところ、どこからどのように照射されたのかは特定できていないが、飛行中の機体に空中からレーザー光を当てるのはむずかしく、ビルや地上から照射されたとの見方が有力。ANAは「警察の捜査がはじまっており、詳細はお話ししかねます」というが、そのうえで「着陸態勢に入っているときだったので、滑走路に向かって一直線になっている状態でした。進行方向の地上側、空港ターミナルが目に入っていた状況であったといえます」と話す。
一方、犯行に使われたレーザー光を照射する機器(レーザーポインターなど)は、出力が高くなるほど明るくなるので、暗い場所での視認性も上がる。最近ではプレゼンテーションや教育現場で、書き示された図表やプロジェクターで表示した映像などを指し示すための「指し棒」として利用されている。また高出力になると、暗い場所では散乱光による綺麗なレーザー光線の軌跡が見られるので、業務用としてショーやコンサートなどでも利用されている。
その半面、高出力になるほど、目に当たったときのトラブルも深刻化する。