声帯を失っても「第2の声」を取り戻せる
しかし、声のかすれにはもっと恐ろしい病気が潜んでいる。「喉頭がん」だ。70代の男性Tさんは17年前、「喉頭がん」と診断された。声のかすれを半年間も放置したのでがんが進行、声帯を含めた喉頭部分を全部摘出した。営業マンだったので声が命だったが、自分の命の方を選択したのだ。
声を失ったTさんだったが、手術後に懸命にリハビリに励み「第2の声」を取り戻し、日常会話ができるようになった。現在、1週間に3回、喉頭摘出手術を受けた人々の発声指導をしている公益社団法人「銀鈴会」の道場に通い、声を失った後輩の患者さんたちにボランティアで発声法を教えている。
Tさん自身が「第2の声」を出してみせながら、発生方法をこう説明した。
「ゲップの要領で息を吐き戻しながら、食道を震わせるのです。最初に呼吸法をしっかり練習すると、3か月で『こんにちは』が言えるようになります」
ちょっとガラガラした声だが、はっきりと言葉が聞こえる。実はTさんが手術しようか迷っていた時、ある先輩が見舞いに来てくれた。先輩も喉頭がんで声を失ったが、第2の声を会得しており、「大丈夫。君も喋れるようになる」と励ましてくれたので手術を決断したという。
Tさん「私が今日、生きて喋ることができるのは先輩のおかげです」
第2の声は「食道発声」といい、新しく声帯として機能する食道を「新声門」と呼ぶそうだ。
星田「いやあ、素晴らしい! 先輩に勇気づけられて、今度は同じ患者さんたちを勇気づけているなんて」
浜島「声をあなどってはいけませんね。声は健康のバロメーター。体が出す病気のSOSのサインなのですね」