大リーグから2人の投手がプロ野球に帰ってきた。ソフトバンクの和田毅と阪神の藤川球児である。
両チームともに熱心なファンが多い土地柄である。マウンドに立ったとき、大きな声援が送られることだろう。しかし、裏を返せば、日本の球界の人材不足が露呈した、との声が...。
いずれも故障で手術を経験
「チームの柱になれるような活躍をしたい」
カムバックが決まった2015年11月14日、和田はそう自信をのぞかせた。かつて多大な応援を受けた福岡での記者会見である。
もう一人の藤川も同じ日に復帰を発表した。
「ただ戻って来ただけではない。全身全霊をかけて戦いたい」
甲子園を沸かした熱い思いをほうふつさせる力強い決意を示した。
しかし、肝心なのは両投手がどんなピッチングをできるかどうかである。
というのも、2人とも大リーグではほとんど活躍できなかっただけでなく、その原因が故障にあったからだ。ともに「トミー・ジョン手術」を受け、和田は12年5月、藤川は13年6月にヒジにメスを入れている。
和田は11年12月に「2年、815万ドル」でオリオールズと契約。しかし、2年間は故障者リスト入りが相次ぎ、メジャー登板はなし。14年からカブスと契約したものの、2シーズンでなんとか100イニングを投げ、5勝5敗。
片や藤川は12年12月にカブスと「2年、950万ドル+出来高」で契約。15年はレンジャース入りしたが、5月に自由契約となり、日本の独立リーグ(四国・高知)へ。大リーグでは1勝1敗2セーブという有様。
カブスは1000万ドル近くを無駄に使ったことになる。
松坂大輔も鳴かず飛ばず
大リーグからの出戻り選手は何人もいる。今シーズンでいえば、楽天の松井稼頭央やロッテの井口資仁らだ。
隠れているのがソフトバンクの松坂大輔。「3年、8億円」で今季から所属しながら登板ゼロ。ずっと米国で手術したヒジの後遺症と闘っている。
そのソフトバンクが、自軍で新人王とMVPを獲得した和田を獲得したのだが、松坂のようにならないか、心配のタネである。ただ、松坂と違って投げられる状態にあることは間違いない。
藤川の評価は低くはない。このオフ、ヤクルトや中日が獲得に動いたという情報もある。四国で投げられることを確認できたからだが、古巣の阪神に金本知憲が監督に就任したことが復帰への決め手となった。
「現役を大リーグで終えたい」
こう言い残して米国へ旅立っただけに、名誉挽回への意気込みは相当なものだろう。
日本のプロ野球では、今シーズン終了後、実力のあるベテランが次々と現役を引退した。中日の谷繁元信、山本昌、和田一浩、小笠原道大、巨人の高橋由伸、西武の西口文也らである。
といって彼らの穴を埋める選手はそうはいない。各球団は米球界をはじめ、アジア、中南米、さらに国内の独立リーグに網を張っている。和田、藤川は「出戻り枠」といえるかもしれない。
プロ野球は今、新しい時代を迎え、これまでの控え選手にレギュラー取りの希望が膨らんでもいる。ただ言えることは、年々、人材が少なくなっていることである。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)