フランスのパリで起きた同時多発テロを受け、作家の乙武洋匡さんが「彼らの主張にはまったく耳を貸さずに国際社会から孤立させることが、本当に平和へと続く道なのか」とツイッターに投稿し、物議をかもしている。
「話し合いの余地があるのか」などと反発を招いているほか、テロ行為を容認していると受け止める人もいる。
テロ組織は国際社会の一員?
2015年11月14日早朝(日本時間)に発生した同時多発テロを受け、各国首脳は声明を出し、国際社会の協調を訴えた。こうした動きに乙武さんは11月15日、自身のツイッターで、
「『国際社会は一致団結して、このテロに立ち向かうべきだ』と言うが、このテロを起こした犯行グループも含めて"国際社会"なのではないだろうか。『シリアで空爆を続けるフランスは許せない』という彼らの主張にはまったく耳を貸さずに国際社会から孤立させることが、本当に平和へと続く道なのだろうか」
と投稿した。
ツイッターでは、すぐに乙武さんの主張に対する反発が広がった。
「話をしてわかる相手じゃないですよね」
「国際社会に耳を貸さず蛮行を繰り広げているのは犯行グループの方でしょう」
「テロリストの言い分を聞けって、さすがにこれはない」
といった書き込みが乙武さんのもとに寄せられた。テロ組織の主張も聞くべきだ、という発言を、テロを容認しよう、と読み取った人もいたようだ。そもそもテロ組織は国際社会の一員ではない、という指摘もある。
「暴力で屈服させることが平和の実現に向けてのベストな選択肢なのか」
乙武さんは最初の投稿から約2時間後、「決して『テロを容認しよう』と言っているわけではありません。テロは、もちろん許されない行為」と断り、
「そのうえで、ああした残虐なテロ行為を行う集団に対して対話の扉を開くことなく、あくまで暴力で屈服させることが平和の実現に向けてのベストな選択肢なのか、疑問を抱いたのです」
と投稿の趣旨を説明。さらに理想主義と批判されたことに、
「しかし、平和の希求とは、あくまで理想を追求するこういなのではないかと思うのです。それが、日本国憲法の前文(第9条ではなく)に書かれた精神なのではないかと思うのです」
と反論した。
それでもネットの風当りは依然として厳しい。ツイッターには「薄っぺらい理想論」「現実に対話が通じない相手はいる」といった声があふれている。
実際の国際社会でも乙武さんが語った方向には進んでいない。11月15日からトルコで開催されているG20首脳会談では、テロ対策の協議が行われ、強く非難する声明を発表する方針だと報じられている。