足手まといの「エレキ」が牽引役
「ソニー復活」と株式市場が判断した根拠は、これまで足を引っ張ってきた、ソニー社内で「エレキ」と呼ばれる電機分野の収益改善だ。その中で最有望株は、従来から競争力があった画像センサーなどのデバイス事業で、部門営業利益は前年同期より6割近く増えた。ゲーム事業の中核「プレイステーション4(PS4)」は、任天堂の苦境とは対照的に好調で、2016年3月期の販売計画を1750万台と、従来予想から100万台増やした。スマホ、テレビ、デジカメもそれぞれ収益が改善した。
エレキの復活が注目されるなか、ソニーらしい「とがった」を製品開発が目に見え始めたことも株式市場を安心させている。CDより高音質な「ハイレゾ」対応のウォークマンや、高精細画質の4Kテレビなどがその筆頭だろう。また、無人飛行機「ドローン」事業の新会社「エアロセンス」の設立や、映像を使ったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の開始などでも先手を打つ。このSNSは、スマホを活用した新しい映像コミュニケーションとして、来年度に100万人の利用者獲得を目指している。
ソニーの陰で、東芝は冴えない。不正会計問題に注目が集まるが、稼ぐ力自体が劣化している。11月7日に発表した2015年9月中間連結決算は営業損益が904億円の赤字となり、前年同期の1378億円の黒字から大幅に悪化。収益が低迷するPOS(販売時点情報管理)システム事業の資産評価を見直す減損処理で696億円の損失を計上したほか、主力の半導体も苦戦した。
こうしたことから、東芝はスマホなどに搭載する画像半導体の生産設備をソニーに売却、1000人以上がソニーに移籍する見込みだ。構造改革が一巡したソニーが東芝に手をさしのべる構図だ。かつて東芝は2008年度に日本勢の中で唯一、テレビ事業を黒字化するなど、構造改革の先駆者として高い評価を得た時期もあったが、それも、今や遠い昔のことになった。