乳がん検診の乳房エックス線撮影(マンモグラフィー)に超音波検査を加えると、40歳代女性の乳がん発見率が、マンモグラフィー単独で行うより1・5倍高まるという調査結果を東北大学の大内憲明教授らの研究チームがまとめ、2015年11月の英医学誌「ランセット」電子版に発表した。
大規模研究で超音波検査の有効性を検証したのは世界初という。
超音波検査の追加は初期の乳がんの発見に有効
研究チームは、2007年から2011年にかけて40歳代女性7万6196人を、マンモグラフィー単独と、マンモグラフィーと超音波検査併用の2つのグループに分けて検診してもらい比較した。すると、乳がんの発見率はマンモグラフィー単独では0・33%であるのに対し、併用では0・50%と1・5倍に上昇した。また、がんを見逃さない割合を示す「感度」も、マンモグラフィー単独は77・0%だったが、併用は91・1%と上回った。
特に、超音波検査の追加は初期の乳がんの発見に有効であることがわかった。乳がんが進行したステージ2と3では単独と併用の差はなかったが、2センチ以下のステージ0と1では、併用の方が発見率は高かった。
若い人の乳がん発見が難しかったマンモグラフィー
これまでは、マンモグラフィーは若い女性の乳がん発見に不向きだと指摘されてきた。40歳代以下の女性は、50歳代以上の女性に比べて乳腺の密度が濃い。マンモグラフィーは乳がんを「白い塊」と映し出すが、乳腺も同様に白く映り、区別が難しいからだ。ちょっと疑いがあると細胞の一部を切除して再検査を行う場合が多く、若い女性の体への負担が問題になっていた。
このため2015年10月、全米がん協会は、それまで40歳から毎年マンモグラフィーを受診することを推奨していたのを45歳からに引き上げる新指針を発表した。日本では、厚生労働省が40歳から2年に1度のマンモグラフィー検診が推奨している。超音波検査は、乳房の陰影像を映し出すため、乳腺としこりを区別しやすい。有効性がさらに高まれば、30歳代からの早期発見にもつながる可能性がある。大内教授は「今回の結果は、国が定める乳がん検診に超音波検査を導入する最初の一歩」と語っている。