MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店(東京都渋谷区)で2015年11月13日から、「今、民主主義について考える49冊」がスタートした。
このフェアは、一時中断していた同店の「自由と民主主義のための必読書50」について、同店スタッフが選書内容とタイトルの見直しを行ったもの。しかし、多くの選書が入れ替わったため、ネットや識者の議論を呼んでいる。
「SEALDs」共著は残るが、単著は外れる
丸善ジュンク堂書店公式サイトの説明によると、新しいフェアは「今」と「民主主義」にフォーカスをしぼったもの。「必読書50」にふくまれていた国家論や憲法論議、全体主義に関する古典名著については「重要」としながらも、ひとまとめにフェア展開するには「テーマが大きすぎて拡散してしまう」ため、別の機会に譲るという。
今回は「選挙」「現代日本政治史」「比較民主主義」の観点を加味して選書した。池上彰さんの『そうだったのか!日本現代史』、北岡伸一さんの『日本政治史』、長谷川三千子さんの『民主主義とは何なのか』などが新たに登場している。
一方で、「必読書50」には入っていたが、今回リストから外れた書籍もある。古典名著にあたるプラトンの『国家』、カントの『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』をはじめとする40冊が姿を消している。
安全保障関連法案に反対する学生団体「SEALDs(シールズ)」の書籍は、高橋源一郎さんとの共著『民主主義ってなんだ?』が残った一方で、その対になる単著『SEALDs 民主主義ってこれだ!』は外れた。最終的に「必読書50」と「49冊」の両方に選ばれたのは、15冊にとどまった。
毎日新聞の報道によると、丸善ジュンク堂は「誤解される余地のないようにした」と説明している。なお「必読書50」よりラインアップ数が1冊減ったが、そのスペースは「各人各様の1冊を入れるための空席」だそうだ。
想田和弘「禁じられるのは僕らの本だけではなくなる」
新たな選書では、保守派論客による著作が増えた。
丸善ジュンク堂の対応に、ツイッターなどでは、「バランスが取れた」という声がある一方、いわゆる「ネトウヨ」へ配慮しすぎなのでは、という意見もある。
社会学者の宮台真司さんは、11月13日の「荒川強啓 デイ・キャッチ!」(TBSラジオ)で、「選書が偏っているのは当たり前」だと指摘。安保法制が背後にある「民主主義フェア」が現政権批判の色合いを帯びるのは当然だとした。
また、『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』がリストから外れた当事者である、映画監督の想田和弘さんは、ツイッターでこう危機感を示した。
「つーか、『誤解を避けるため、想田や小熊や中野(編注:小熊英二慶応大教授、中野晃一上智大教授)の本をフェアから外す』を許していると、そのうちそれは『誤解を避けるため、想田や小熊や中野の本は書店に置かない』になり、『想田や小熊や中野の本は出版しない』にエスカレートするよ。しかも禁じられるのは僕らの本だけではなくなると思います」
なお、フェアは、12月12日まで約1か月開催される予定だ。