独身寮などの職員宿舎をめぐる日本年金機構の「ムダ遣い」ぶりが、次々にあぶり出されている。
すでに2014年度末時点で入居者ゼロの宿舎が13棟(計248戸)あり、このうち東京や千葉、沖縄などにある7棟(計170戸)は少なくとも3年以上入居者がいなかったことが判明。簿価15億円相当の事務所や宿舎が有効に活用されていないことが、会計検査院に指摘されている。
職員住宅の建設費、6年間で62億円強
民主党の「漏れた年金情報調査対策本部」と「厚生労働部門会議」は2015年11月5日、国会内で合同会議を開いた。繰り返される年金不祥事に関連して、入居者がいない年金機構の職員宿舎問題などについて、日本年金機構と厚生労働省、会計検査院、財務省、総務省から説明を聞いた。
それによると、1998~2003年度に竣工した同機構の職員宿舎の建設費や土地購入費の総額に年金保険料62億円強が充てられていたことがわかった。
また、会計検査院から「使わないのであれば国庫に返納すべき」との指摘を受けて検討することになっている国庫返納について、同機構はこれまで、総務省や財務省と連携して検討するなどと説明していたが、この日の合同会議では、同機構と厚労省が独自に判断していることも明らかになった。民主党は同機構に対して早急な対応をあらためて求めた。
職員宿舎の建設などに充てられた「62億円」の年金保険料について、日本年金機構は「1997年の財政構造改革推進に関する特別措置法に基づき、臨時措置として充てています」と説明。「ルール通りに対応しています」と話し、問題はないという認識のようだ。
一方、同機構が現在保有する、入居者がいない職員宿舎はどれも社会保険庁時代に建てられた物件。新たに建設された職員宿舎とあわせても、入居率は66%というから、空き部屋は少なくない。
たとえば、民主党の「漏れた年金対策本部」が2015年10月に視察した千葉市幕張にある独身寮(42戸)は、大型ショッピングセンターが近く、交通の便もよい好立地だが、風呂・トイレが共同で築年数も46年と古いことから、2010年11月から約5年間、入居者はゼロだ。しかも、家賃は驚くことに月額1601円と破格だ。
民間家賃の7割補助を4000人が受けている
同機構が全国に保有する職員宿舎207棟のうち、入居者ゼロは2014年度末で13棟ある。このうち、東京都東久留米市の独身寮の家賃は月額1128円。職員が実際に住んでいる宿舎でも、東京都昭島市の独身寮は1984円、同武蔵野市の独身寮も家賃は2244円だ。世帯向けの職員宿舎(60平方メートル前後)の家賃も、ほとんどが数千円台から1万円台という激安物件とされる。
ちなみに、武蔵野市周辺の独身向け(1DK)の家賃は5万円台が主流。築30年ほどのアパートでさえ5万円を超えている。東久留米市や昭島市でも4万円台だ。おそらく、東京都内で1000~2000円台などという家賃の住まいは、どこを探してもないだろう。
これだけ多くの空き部屋があるにもかかわらず、職員宿舎に入居していない職員は家賃の7割を補助してもらって、一戸建て住宅やマンションに住んでいる。家賃補助(住宅手当)の総額は年間13億円(2014年度)。支給を受けている職員は4000人(15年4月時点)で、これは全職員(1万880人、正規職員14年度定員)の36.8%にものぼるのだ。平均支給額などは公表していないという。
会計検査院の指摘によると、3年以上入居者ゼロの職員宿舎の価格は帳簿上で約15億円。ほかにも入居者がほとんどいない職員宿舎が複数あるから、同機構の「ムダ遣い」は計り知れない。
その一方で、日本年金機構には年間2826億円(2014年度予算)もの運営費交付金が投入されている。職員の給与や職員宿舎の運営費や家賃補助も、この交付金で賄われている。その交付金は、国庫財源と年金保険料を財源にしている、つまり国民の税金だ。
年金のムダ遣いについては2007年の「消えた年金問題」のとき、ゴルフ用具やカラオケセットの購入に使われていたことが発覚し、世の批判を浴びたことが記憶に新しいところ。変わらない「お手盛り体質」にインターネットでは、
「関係者の給与を削減しろ! いや賠償しろ!」
「株で運用して溶かしたならまだしょうがないとも思うけど、身内で放漫経営してよってたかって食いつぶしたのは犯罪だろ」
「もう年金いらないから払った分、返してくれよ」
「酷すぎる。こんなデタラメが通用するから不祥事が続くんだ」
といった怒りの声が収まらない。