財務省が政府の統計にケチをつける異例さ
ただ、統計は程度の差こそあれ完璧なものはない。まして、政府の一員である財務省が、政府の統計にケチをつけるというのは異例だ。従来指摘されてきたこととはいえ、このタイミングで持ち出したのは、景気の足踏みが隠しきれなくなってきて、このままでは補正予算編成に向けた歳出圧力が強まる恐れがあるから、とささやかれる。その先には、2017年4月に予定される消費税率10%への引き上げの先送り論まで出かねないという懸念もあるようだ。
同時に、「GDP600兆円」との関連で見る向きもある。実は、GDPの統計数字は、だまっていても20兆円程度積み増されることが確定している。GDPは国連の「国民の経済計算(SNA)」を基準に推計される。2008年の基準見直しで「研究開発費」が算入されることになったのだが、日本は2016年末に新基準に移行し、その結果20兆円ぐらい増えるという。理由は、研究開発費が従来、付加価値を生まない「経費」として扱い、GDPから除外してきたのを、新基準では、付加価値を生む「投資」ととらえるのだ。
今回財務省が指摘するように家計調査などが見直され、もっといい数字になれば、個人消費などのデータも改善し、GDPが大きくなる。「財務省の問題提起はGDP600兆円にむけた数字のかさ上げが陰の狙い」(全国紙経済部デスク)との見方もでている。