毎年11月10日は日本の「いいトイレの日」、また11月19日は国連が定める「世界トイレの日」だ。この時期、普段何気なく使っているトイレについて考える機会にしてはどうだろうか。
羽田空港国際線ターミナルのトイレは2014年9月、政府の「日本トイレ大賞」で国土交通大臣賞を受賞した。最先端のトイレを学ぼうと、2015年11月7日に見学会が開催された。
ユニバーサルデザインの考えに基づいた設計
見学会はNPO法人・日本トイレ研究所が開催し、約60人が参加した。概要説明にあたった、東京国際空港ターミナル会社(TIAT)によると、同空港はユニバーサルデザインの考えに基づき、障害者だけでなく高齢者や妊婦、子ども連れが利用可能なトイレ計画を立てている。例えば車椅子使用者同士がすれ違えるようにトイレ内の通路の幅をゆったり取り、弱視の人でも利用しやすい配色に配慮したという。
ターミナル内のすべてのトイレには、車椅子使用でも利用できる「多機能トイレ」が併設されている。また訪日外国人の使用を念頭に、各種案内は日本語のほか英語、中国語、韓国語の4か国語表記になっており、水洗トイレを使わない国から来た人に向けては、ひと目で正しい使い方が分かるように絵で示した。
トイレ内の清掃は1日7回あり、ごみ箱に捨てられたごみをこまめに回収するなど、悪臭防止対策を徹底している。こうした取り組みが評価され、英国企業SKYTRAX社が実施する世界の空港評価で2013、14年と2年連続で世界最高の評価を受けた。
災害発生による停電に備え非常用電源が確保されており、もしインフラが途絶えても最大72時間トイレを衛生的に使うことが可能だ。
「和式トイレ」設置の理由を質問
参加者は、実際に国際線ターミナル内のトイレも見て回った。最初に訪れた「補助犬専用トイレ」は1階に設置されており、国内の空港では初の試みだ。補助犬とは、盲導犬や介助犬など体の不自由な人を助ける役目を担う。
このトイレは普段は施錠されているが、入口横のインターホンを押して係員を呼び出し、開けてもらう仕組みだ。中は補助犬の洗い場にシャワーが設置されており、車椅子でもスムーズに出入りできる。
続いて一般トイレや多機能トイレを見学。参加者は実際に中に入って状況を確認しながらお互いに感想を言い合ったり、車椅子を利用する参加者から意見を聞いてメモを取ったりしていた。
TIAT職員との質疑応答では、「補助犬トイレの使用頻度はどのぐらいか」「停電が72時間を超えたらどうなるか」といった疑問や、「トイレマークの男性用の青色が、色調が抑えられていて少し見えにくい」という指摘が出た。また、いわゆる「和式トイレ」を設置した理由を問われたTIAT職員は、「10年前の設計時に、和式も各トイレにひとつ設けようと決めた」と説明していた。
日本では2019年にラグビーワールドカップ、翌20年に東京五輪・パラリンピックと国際規模のイベントが控えている。世界中からやってくる人たちを「おもてなし」するうえで、トイレの充実も欠かせないだろう。