新アベノミクスがわかりにくいという。たしかに、「一億総活躍社会」というネーミングはどうか。また、新3本の矢として、名目GDP600兆円、出生率1.8、介護離職ゼロがあるが、これらは「矢」(手段)ではなく、「的」(目標)である。
前のアベノミクスの3本の矢は、政策手段としてはオーソドックスで、金融政策と財政政策というマクロ政策、それに規制緩和(成長戦略)というミクロ政策からなるものだ。これは世界どこでも標準的なもので、代えようがない。つまり、普通に考えれば、これらの政策手段を使って、達成すべき目標が「新3本の矢」になる。
各省庁の「短冊」の寄せ集め
ここで、最重要の目標は名目GDP600兆円だ。社会保障の話は、ほとんど財源論に行き着く。社会保障は、市場原理があまり働かないので、基本的には財政支援が必要な分野だ。民間経済を活用するものの、その背後には財政支出が求められる。例えば、介護士や保育士の給料が低すぎるという問題も、放置しておけば、そのうち人手不足になって自ずと給料が上がる、というわけにはいかない。
名目GDP600兆円の達成のために、経済財政諮問会議で出てきた案は、ちょっとセンスを疑ってしまうものだ。11月11日(2015年)の会議に出された民間議員4人の連名の「GDP600兆円の強い経済実現に向けた緊急対応策について」をみると、そのダメぶりがわかる。
筆者はかつて小泉政権の時、この民間議員ペーパーを書いていたが、その際メッセージ性を強調するために、文章は短く、文章1枚、資料1枚で、文の文字数は600字程度にした。
ところが、昨(11)日の民間議員ペーパーをみると、資料抜きで細かな字で3枚、文字数は2400字。これでは何が言いたいのかわからない。内容も、役人ベースで各省からの要求を短い文章でまんべんなくまとめたものだ。こうした形式の文章を、「短冊の寄せ集め」という。七夕に願い込めて短冊を書くが、各省も自省の要求が通るように「短冊」を書いて、内閣府に出し、内閣府の事務方が、それら「短冊」を寄せ集めて、ペーパーを作るからだ。