がんの中でも早期発見が難しいすい臓がんを、血液を調べるだけで見つけることができる検査キットを開発したと、国立がん研究センターの本田一文ユニット長らの研究チームが2015年11月9日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版に発表した。
すい臓がんは治りにくく、進行してしまうと5年後の生存率は10%未満になる。これまで有効とされる検診がなく、早期発見も困難だった。研究チームは米国立がん研究所と共同で患者の血液を調べた結果、善玉コレステロールを作るタンパク質「アポリポプロテインA2アイソフォーム」が、すい臓がん患者の血液中では濃度が低下することを発見した。このタンパク質をバイオマーカー(目印になる生体物質)とする検査キットを開発して、すい臓がんの患者や健常者ら計904人分の血液を対象に検査を実施。従来使われていた血液検査より、かなり高い精度で早期のすい臓がんを発見できることが確認できた。しかも、すい臓がんの前段階である慢性すい炎なども検出することができた。
研究チームは、2015年以内にも1万人規模の検証を始め、実用化を目指すという。