巨人の「野球賭博」事件は2015年11月10日、プロ野球組織が3投手の「無期失格」処分を決め、一応の決着となった。
処分は「永久失格」に次ぐものだが、その差は試合で八百長をしていなかっただけのことで実質は同じである。しかし、それでも今後の球界に不安を残す内容、との声が多い。
法曹出身コミッショナーでも調査に限界
「プロ野球の品位を汚し、多くの選手の名誉をも傷つけた。またファンの信頼を損ねた」
プロ野球組織の熊崎勝彦コミッショナーは、巨人の福田聡志、笠原将生、松本竜也3投手の処分理由をそう説明した。コミッショナー自身が法曹界出身だけに、自分の代に起きた出来事に無念の表情がうかがえた。
事件は、笠原が巨人内の仲介人的存在で、福田を誘いプロ野球、高校野球、大リーグの試合に賭けた。松本は笠原を介してプロ野球、福田を介して高校野球に賭けたという。
「軽はずみな気持ちで始め、どうしてもやめられなかった」(福田)
「いろいろな人の人生をめちゃくちゃにし、償っても償いきれない。死ぬまで引きずっていく」(笠原)
「興味本位で手を出した」(松本)
巨人が発表した3投手のコメントである。なかでも笠原のそれは事件の性質の悪さを如実に表すものといえよう。
福田は社会人ドラフト希望枠、松本はドラフト1位で入団。笠原は大型で、いずれも期待された。22歳の松本、24歳の笠原は、これからが本当の野球人生とされる年齢だった。
今回の処分は、日本野球機構(NPB)の調査委員会の報告書をもとに、コミッショナーがプロ野球界としての最終処分を決めたものである。その前に巨人は3投手の契約解除を明らかにしている。
球界関係者が不安を持っているのは、十分な調査が行われたかどうか。
「処分は選手のことばかりで、全体像が不明だ。それなのに処分を発表するのは性急ではないか」
法曹界からそんな声が出ている。それは当を得ていて、コミッショナーは球界としての限界を次のように語っている。
「重要な関係者から十分な聴取をできなかった」
「組織的な全体像は無理だった」