東京大学で初めて行われる推薦入試で、「定員割れ」の学部が相次いで出ていたことが分かった。一般入試では志願者が増え、東大の人気が落ちたわけではないというが、理由はいったい何なのか。
「すげえ低倍率でワロタ」「東大の推薦ってめっちゃムズイぞ」「募集条件が厳しいから出願すらできないよ」
全体の出願倍率も、2倍弱に留まる
東大が2015年11月9日、推薦入試の出願者数を発表すると、ネット上ではこんな声が上がった。
全10学部で新入生の約3%に当たる計100人程度を募集したが、出願者は173人に留まった。2倍にも満たない数字だ。報道では、300人前後との予想も出ていたが、それを大幅に下回った形だ。
さらに、経済学部では募集10人程度で7人、薬学部でも5人程度で4人と、定員割れまで起こしてしまった。また、文学部では10人程度で10人、医学部健康総合科学科では2人程度で2人と、定員と同じだった。
こうした結果になった理由としては、推薦入試のハードルが高いことが挙げられている。東大の募集要項を見ると、「科学オリンピックで顕著な成績」、「国際バカロレアで優秀な成績」、「商品レベルのソフトウェア開発」といった条件が掲げられており、一握りの「スーパー高校生」しか受験できなかったのではないかというのだ。
しかも、来年1月の大学入試センター試験を受けての高得点なども求められており、「そんな人ならもっと楽に通る一般入試を選ぶのでは」といった声も多かった。
駿台予備学校・進学情報センター長の石原賢一さんは、2倍弱の倍率について、「応募は220~230人ぐらいと思っていましたので、確かに少ないですね」と話す。
特に、石原さんが応募が減った理由として指摘するのは、募集条件が厳しいことに加え、高校の推薦枠が各校で男女各1人までとされたことだ。
地方から変わったタイプを求め、来年は変わる?
「開成や灘といった難関男子校に条件を満たす子は多いのに、高校側は、最も優秀な子を1人しか選べませんでした。東大が女子をほしいのは分かりますが、実際の志望者は少ないこともあります。もっと枠を広げて、各高校で文系1人、理系1人ならよかったと思います。受験生は学部単位で選ぶわけですから、理想は各学部1人でしょうね」(石原賢一さん)
推薦入試では、法学部が募集10人程度で24人、理学部が10人程度で32人、医学部医学科が3人程度で9人と、3倍前後に達した。これは、最も優秀な生徒が最も難しい学部を狙うため、必然的に集まってしまったという。その反動で、定員割れを起こす学部も出たわけだ。
出願条件について、東大はスーパー高校生を求めているわけではないと石原さんは言う。
「世界大会でなくても、高校の発表会で1位でもいい、といった話は聞いています。後は、東大がそれを見て判断するわけです。今の東大では、飛び抜けた才能の子ではなく、オールラウンダーの子が合格しています。将来的にはノーベル賞も取れるような人材を育てたいわけですから、東大は、地方などから変わったタイプを入学させて大学を活性化したいと思っています」
しかし、応募が多すぎては手間がかかり過ぎるため、東大は、適正な人数で選考したいと考えたのではないかという。そこで、募集条件を誇張しすぎた結果、思うように人が集まらなかったと石原さんはみている。
「推薦の条件が緩い大学は、志願者も多くなっています。東大もそのようにして、書類選考で落とせばよかったのではないでしょうか。こうしたことを考えて、今後の入試では改良されていくと思います」