東京23区内にいるホームレスが減っている。2015年8月に都が行った調査では807人で、調査をはじめてから夏季では最も少なかった。約5800人もホームレスがいた16年前のピーク時に比べて大きく減少しているが、背景には何があったのか。
景気の改善のほか、行政側は、支援サービスの拡大を理由に挙げるが、ネットの一部では2020年の東京オリンピックを控えて、ホームレスへの締め付けが厳しくなっているのではないか、といった見方も出ている。
「自立支援センター」は常に満杯
東京都は毎年1月と8月に道路や公園、河川敷、駅などにいるホームレスの数を調査している。1999年8月の5798人をピークに年々その数は減少していて、2013年8月は1057人、14年8月は914人だった。
都福祉保健局は減少している理由を、都と23区が共同して取り組んでいる「自立支援センター」などの施策に効果があったとみている。
2000年11月に初めて設置された同センターでは、宿泊場所の提供や就職支援が行われている。現在は上野や目黒など全部で5か所あり、最長6か月まで滞在することができる。
都と区では、職員らが巡回してセンターを利用するようホームレスに促している。各センターの定員は70~80人だが常にいっぱいだという。
新宿高架下では「5日前に出ていけと言われた」
一方で、ホームレスが多く生活していた渋谷区立の宮下公園が2014年の年末から年始にかけて閉鎖され、彼らが追い出されたことなどから、行政の締め付けが厳しくなったとする見方が一部ではある。ツイッターには
「東京五輪でまたホームレスを無情にも排除するんだろ」
「オリンピックのために移動させられたのではないのでしょうか?」
「東京を追い出されたホームレスが神奈川、千葉、埼玉に増加している」
といった憶測が書き込まれている。2015年11月10日、新宿駅の高架下にいたホームレスの女性も「5日前にここから出ていけと言われたばかり」と語っていた。
ただ、都福祉保健局は締め付け強化を否定している。担当者は「支援はこれまでずっとやってきたこと。オリンピックのために一時的に追い出しても何にもならない」という。
厚生労働省が2015年1月に行った調査でも、ホームレスの減少は全国的な傾向だ。東京都で減少する一方、関東各県で増えている訳でもない。
新宿にいたほかの複数のホームレスも「最近になって厳しく言われたことはない」と話していた。ただ、「自立支援センターの利用をすすめられた」という話も聞くことはできなかった。都や厚労省の調査でのホームレスの減少は、ネットカフェなどで生活している人が対象になっていないことも影響している可能性もある。