新婚ホヤホヤのころ、毎朝出勤前には欠かさなかった「いってらっしゃい」のキス。夫婦生活が長くなると、いつの間にかそんな習慣もなくなって...。
夫婦円満のためにも、結婚年数にかかわらず、ぜひ続けて欲しいところだが、実はキスの凄さは愛情を深める以外もあるようだ。これを読んだら、明日から毎朝のキスが復活するかも。
「アレルギー反応減」でイグ・ノーベル医学賞
夫婦間のキスに関する、こんな調査がある。ゲンナイ製薬が2015年8月31日~9月9日、20歳~39歳の配偶者がいる男女1000人を対象に、「いってらっしゃい」のキスなど習慣的にキスをするかをたずねた。「する」と答えた割合は、結婚1年目では46.3%とほぼ半数に上ったが、5年目では30.5%、10年目以降となると21.0%に減少した。
アツアツカップルだった新婚当初から年月がたてば、つい照れくさくなって朝のキスをやめてしまう人が少なくないだろう。ところが、キスの効果についてはこれまでいろいろな研究結果が出ている。今から47年前、1968年6月13日付の米紙「ミルウォーキー・ジャーナル」にこんな記事が出ていた。
「毎朝、出勤前に妻とキスをする夫は、そうでない夫よりも健康で寿命が長く、収入も多い」
これは、当時の西ドイツ・キール大学で心理学を専門としていたアーサー・サボー教授の研究によるものだ。「いってらっしゃい」のキスをした男性は、「その日1日をポジティブな気持ちで始められる。心理的、精神的に人と調和する感情がもたらされる」という。さらに、「キスをしない夫」と比べて平均5年長生きするうえ病気のリスクは50%減少し、収入は20~30%多いとした。記事では、当時の西ドイツの経営者ランキングで1~100位までに入った人物のうち、「いってらっしゃい」のキスをしているのは87%に達しているとも報じている。
これはかなり昔の調査だが、キスの素晴らしさを示す研究はほかにもある。ユーモアあふれる世界的な研究に贈られる「イグ・ノーベル医学賞」を2015年9月に受賞した大阪府の開業医、木俣肇医師。その研究成果は、キスによりアレルギー反応が減弱するとの内容だ。アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を持つ患者とそのパートナーのカップルに、ムードのある映画音楽を流しながら30分間キスをしてもらい、その後の反応を調べたところ、アレルギー患者のダニやスギ花粉に対するアレルギー反応が減ったという。
「アスペルガー症候群」や「自閉症」の症状改善に期待
2008年7月11日付の「クーリエジャポン」にも、キスと健康にまつわる記事があった。1度のキスで30近い筋肉が動くと言われ、3分間キスすると約15カロリーが消費されるという。
キスを交わすことで、「オキシトシン」というホルモンが分泌される。「愛情ホルモン」とも呼ばれ、気分を安定させる効力があると言われている。2015年10月14日の「おはよう日本」(NHK)によると、妊婦の陣痛促進剤などとして医療現場で使われているオキシトシンが、ここ数年は人のコミュニケーションを深める役割を持っていることが分かったという。例えば「アスペルガー症候群」や「自閉症」の症状を改善させる初の治療薬になるのではないかと、研究が進められているそうだ。
東京大学医学部付属病院の山末英典准教授らの研究チームは、他人とのコミュニケーションが苦手な「自閉スペクトラム症」と診断された男性患者20人にオキシトシンを1日2回、6週間噴霧する臨床研究を行った。その結果、投与しなかった患者とは違い、無表情だった人が周囲の人と会話したり笑ったりするような変化が起きたという。研究成果は、英科学誌「ブレイン」電子版に2015年9月3日付で掲載された。