インフルエンザが流行する季節が近づいてきた。とくに乳幼児やお年寄り、受験生のいる家庭では心配だ。
2015年は、ワクチンが対応するインフルエンザの型が3種類から4種類に増え、値上げ傾向にある。本格的な流行に備え、どうすべきか。予防接種に関する疑問を専門家に聞いた。
ワクチンは「相対的なリスク」を減らす
今年はインフルエンザの予防接種を打つべきか迷っている人も多いのではないだろうか。すでに報じられている通り、ワクチンが対応するインフルエンザの型が1種類増えた。ワクチンの接種費用は、療機関によって異なるが、500~1000円程度値上がりしているという。家族が多いほど出費もかさむが、一人が感染すると家族全員にうつる恐れもあるので悩ましい。値上がりしたからには、予防効果も高まるはずと信じたいが、実際はどうだろう。
アンチエイジング医師団のメンバーで神戸大学感染症内科教授の岩田健太郎氏は、
「これまでのワクチンはA型株2種類、B型株1種類に対応していましたが、今年からはB型が1種類追加され、カバーできる確率はより高くなったといえます。ただし、ワクチンはあくまでリスクをある程度下げるものであって、接種したからといって感染しない、リスクがゼロになるというものではありません」
と言う。
ワクチンを接種してもかかってしまうなら、「打っても無駄」という気持ちもわからなくはないが、岩田氏はこう説明する。
「ワクチンには、その人が持っている免疫力を高める効果があります。免疫力の高まり方には個人差があるので、同じワクチンを打っても、誰でも同様の効果が得られるわけではありません。ですから、ワクチンを接種してもかかりやすい人とかかりにくい人がいるのは確かです。しかし、接種したのにインフルエンザにかかったからといって、効果がなかったとはいえません。ワクチンは、打たなかった場合と比べて発症しにくくする、あるいは重症化を防ぐなどといった『相対的なリスクを減らす』ものと考えるのが適切でしょう」
岩田氏は、とくに妊婦や高齢者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、免疫不全の患者など、重症化しやすい人はなるべく接種するよう勧めている。