「テレビがつまらないのは、視聴者からすぐに苦情が来るから」――そんなテレビ局員の嘆きを伝えるツイートが今、話題となっている。
ツイートには大きな反響が寄せられ、「可哀想だ」などと制作側に同情的な声も上がった一方、「クレーマーなんぞ昔から居た」「逃げるな、工夫しろ」と叱咤する声も出た。
「大食いやったら勿体無い、ツッコミ入れたらいじめだと」
2015年11月3日、動画配信サイト「ニコニコチャンネル」の一番組を運営するユーザーが、あるテレビ局員とのやりとりをツイッターに投稿した。
局員に「なぜ最近のテレビはつまらないか」を聞いたところ、「(視聴者から)苦情がくるからです。大食いやったら勿体無いと言われ、ツッコミ入れたらいじめだと言われ、最終的にクイズしか作りづらくなった」との答えが返ってきたという。
視聴者の苦情にがんじ絡めにされ、思うような番組作りができなくなっている。そんな制作現場の苦悩が伝わってくるツイートだ。
ツイッターの反応は様々で、
「可哀想だ」「世知辛い」
という同情の声だけでなく
「クレーマーなんぞ昔から居た。それの対処に、楽な『逃げ』ばっかりけ使う様になっただけ」
「逃げるな、工夫しろ」
と手厳しい指摘も上がった。
実際、テレビ番組を「つまらない」と感じる人は少なくない。衛星放送大手「スカパーJSAT」が9月28日に発表したテレビ視聴に関する意識調査では、「最近、テレビがつまらないと感じることが多いか」という設問に「そう思う」と答えた人は全回答者の約8割におよんだ(編注:調査は9月1日から8日、15歳から69歳までの視聴者1000人に実施)。
視聴者に分かりやすくしようとした結果、視聴者に「ウザい」と思われる
「ネットの厳しい声も致し方ないのではないでしょうか。実際つまらないですし」
そう語るのは、東京都内の番組制作会社に勤める20代の社員だ。制作者の1人として、視聴者同様今の番組を「つまらない」と感じている、と説明する。
ただ、つまらなさを作り出す原因は「苦情」だけではない。視聴者の可処分時間をスマートフォンに奪われた、視聴率至上主義に陥った、制作費が少なくなった、人材が流出している、という制作側の問題だけでなく、芸能人の内輪ネタが多い、という出演者側の問題まで、すでにあらゆる原因が報じられている。
前出の番組制作会社社員は、制作側の「視聴者目線」が空回りしていると話す。
「番組にテロップが多いのは、視聴者に分かりやすくしようとした結果なんです。実際、プレビュー(編注:放送前のVTRチェック)では『これじゃあ視聴者が分からないから』という意見もたくさん出ます」と明かす。画面に表示されるテロップは、うるさいとも言われる演出だ。それが視聴者への配慮から生まれたとすれば、皮肉と言える。
それに加え、制作側の「アイデアの枯渇」も挙げる。「単純につまらない企画が増えたのだと思います。面白い番組は今でも面白いですし、テロップを入れたからといって面白い企画がつまらない企画になることはありません」という。
取材の最後に、「どの番組も死ぬ気で一生懸命作っていて、手を抜いているわけではありません。ただ、その結果視聴者に認められないものばかり作っているということなのでしょう。悲しいですが」とつぶやいた。