ラグビーのワールドカップ(W杯)で一躍注目の人となった五郎丸歩が豪州のレッズに入団。その会見が2015年11月5日に浜松市で行われ、自信のほどを示した。
五郎丸はいまや「日本の顔」だ。タレントの福山雅治と並ぶ存在、という声が上がるほどなのだ。
「日本ラグビー中興の祖になる男」
確かに、今回のW杯で日本は南アフリカ戦で「奇跡の勝利」を収め、その象徴としてクローズアップされたのが素晴らしいキック力を披露した五郎丸である。
五郎丸はW杯で58得点をマークし、大会のベスト15に選出された。日本選手では初の快挙だった。
「ラグビー中興の祖になる男」
と、日本の関係者の期待は大きい。
この活躍が南半球の最高リーグであるスーパーラグビー(SR)に所属するレッズの目に止まった。
「レッズからのオファーはエディ(日本代表ヘッドコーチ)を通じてあった。米国戦の前にいくつかオファーは頂いていた」
五郎丸はいきさつをそう振り返る。
日本にもサンウルブズという世界で戦うチームがあるが、あえてレッズを選んだのは二つの理由があった。
キッカー不在のチームに大きな期待
第1は「家族との生活」である。
北半球の日本では現在所属するヤマハ発動機の選手として冬のトップリーグでプレー。それが終わると季節が日本と逆となる豪州に渡り、SRで試合を行う。
「家族と一緒にいられる時間ができる」
そう五郎丸は説明する。サンウルブズはアフリカでの試合が多く、家族と離れるリスクがある。
第2は豪州への思い入れ。高校3年生のとき、日本代表としてレッズが本拠地とするブリスベンで試合を行い、同時に本場のラグビーを目の当たりにして感動。そのときスター選手と空港で記念写真を撮るなど、世界へ目を向けた第一歩となった。
「エディからレッズの話を聞いたとき、断る理由がなかった」
この言葉で豪州への思いが分かる。夫人もかつて豪州で生活したことがあることも決断の理由の一つになったようだ。
一方のレッズはキッカーが不在。五郎丸はすでにレッズのホームページで日本語の名前が見出しになっており、期待の大きさがうかがえる。
「世界で戦えるという自信をW杯でつかめた。キックをレッズが評価してくれたと思う。失うものはないので初心にかえってレギュラーを目指して頑張りたい。試合に出なければキックはできませんから」
謙虚さのなかに自信が読み取れる。最後に言った。
「日本のファンには、まずトップリーグの試合を応援してほしい。余力があったらレッズと私に関心を持ってくれれば、と思う。2019年の日本でのW杯開催に向け、ラグビーをよく知ってほしい」
五郎丸のコメントはさわやかな風を日本全国に送った。トップリーグの五郎丸が出場する試合の入場券はすでに完売だという。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷齊)