キッカー不在のチームに大きな期待
第1は「家族との生活」である。
北半球の日本では現在所属するヤマハ発動機の選手として冬のトップリーグでプレー。それが終わると季節が日本と逆となる豪州に渡り、SRで試合を行う。
「家族と一緒にいられる時間ができる」
そう五郎丸は説明する。サンウルブズはアフリカでの試合が多く、家族と離れるリスクがある。
第2は豪州への思い入れ。高校3年生のとき、日本代表としてレッズが本拠地とするブリスベンで試合を行い、同時に本場のラグビーを目の当たりにして感動。そのときスター選手と空港で記念写真を撮るなど、世界へ目を向けた第一歩となった。
「エディからレッズの話を聞いたとき、断る理由がなかった」
この言葉で豪州への思いが分かる。夫人もかつて豪州で生活したことがあることも決断の理由の一つになったようだ。
一方のレッズはキッカーが不在。五郎丸はすでにレッズのホームページで日本語の名前が見出しになっており、期待の大きさがうかがえる。
「世界で戦えるという自信をW杯でつかめた。キックをレッズが評価してくれたと思う。失うものはないので初心にかえってレギュラーを目指して頑張りたい。試合に出なければキックはできませんから」
謙虚さのなかに自信が読み取れる。最後に言った。
「日本のファンには、まずトップリーグの試合を応援してほしい。余力があったらレッズと私に関心を持ってくれれば、と思う。2019年の日本でのW杯開催に向け、ラグビーをよく知ってほしい」
五郎丸のコメントはさわやかな風を日本全国に送った。トップリーグの五郎丸が出場する試合の入場券はすでに完売だという。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷齊)