保護遅れる日本、米国では「におい」も商標に
特許庁が音や位置、動きなどの商標認定を急ぐには理由がある。実はこの分野で日本は後進国だからだ。
欧米では文字や図形など視覚で認識できる伝統的な商標以外にも、「動き」「輪郭のない色彩」「音」などが商標として保護されている。米国では「音」に限らず、「におい」のように視覚や聴覚で認識できない商標も保護されている。
韓国も既に導入済みの「動き」「位置」などに加え、2012年施行の改正商標法で「音」「におい」も保護対象とすることになった。中国でも「輪郭のない色彩」「音」を商標として保護する方向で検討している。
こうした国際的な動きの背景には近年、各国が締結する自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)などの国際交渉がある。国際ビジネスの進展とともに知的財産保護が重要なテーマとなり、「音」など視覚的に認識できない商標も保護対象として強化する方向となっている。日本が大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)も、音について商標制度の導入が義務化されることになっている。
知的財産権には特許権や著作権など創作意欲の促進を目的とした「知的創造物についての権利」と、商標権や商号など使用者の信用維持を目的とした「営業標識についての権利」がある。CMなどに使う「音」や「動き」「位置」などが商標と認められれば、企業は言語を超えた発信手段として、ブランド戦略を強化することができる。
日本での新たな商標の出願は2015年4月以降1000件余あり、「音」や「動き」などの商標登録は今後も増えるのは確実だ。