SDRへの採用はAIIBと同じ構図
SDR採用で最後まで問題になったのが為替レートや金利、資本取引をめぐる規制の多さだった。これについては、2015年8月、中国が毎朝発表する人民元レートの基準値の決定方法を、市場での前日の終値を参考にする方式に変更。この時は人民元相場切り下げが先行し、中国経済の減速を示す動きと受け止められて世界的な株安を招いたが、IMFは為替相場を市場にゆだねる方向の動きとして評価した。長年の課題だった金利の自由化も、2015年10月23日に最後まで残った預金金利の上限規制を撤廃した。すでに貸出金利の下限規制は2013年7月に撤廃。2015年5月には、預金保険制度を開始して銀行間の競争が激しくなる事態に備えており、今回の措置で制度上は完全自由化を実現した。こうした改革が、全体として国際的に評価を受け、SDR採用になった。
政治的には水面下での綱引きはあった。端的に言うと、アジアインフラ投資銀行(AIIB)と同じ構図だ。英国が主要国でいち早く参加を表明、ドイツなど欧州勢が同調し、透明性などの点から懸念を示してきた日米が置いてきぼりにされたAIIBと同様、日米は中国の規制緩和が不十分で、自由な利用が担保されるか疑問だとしてSDR採用に慎重な姿勢を示してきた。
それがはっきり変わったのが、2015年9月下旬の米中首脳会談で、オバマ米大統領は「IMFの評価基準を満たすことを条件に支持する」と表明し、態度を軟化させた。日本も麻生太郎副首相兼財務相が同10月27日の会見で、「(構成通貨の)要件が満たされる通貨が増えるのはいいことだ」と語るしかなかった。英独が支持を表明していたほか、ブラジルなど新興国が雪崩を打って賛成の意思を示しており、「日米の外堀は埋まっていた」(国際金融筋)。