ドライバーが運転操作をしなくても安全に走ることができる自動運転車の開発が進むなか、実用化に向けて政府のルール作りが始まった。
道路交通法や日本も批准する「道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)」では、走行する車にはドライバーが乗り、さらにハンドルやブレーキなどを操作することが前提となっている。
日本メーカーは2020年の実用化が目標
日米欧の自動車メーカーが自動運転車の開発にしのぎを削るなか、各国からこの条約の見直しに向けた動きも出ている。日本政府も国家戦略特区プロジェクトとして自動運転タクシーの実証実験を神奈川県などで行う方針で、自動運転車の開発や実用化に向けた後押しに乗り出している。
こうした状況を受けて、警察庁は2015年10月下旬に専門家らによる検討委員会を設置した。現在の法律は自動運転を想定したものでない。まず、事故が起きた時の責任の所在といった課題をまとめたうえで法的検討を進めていく。これから本格化が予想される自動車メーカーの公道実験に関するガイドラインも作成する。
自動運転車はセンサーやカメラ、GPSなどの情報から人工知能(AI)が障害物までの距離や周囲を走る車両の速度などを解析して走行する。自動車業界は「人為的なミスを減らして安全性向上による事故減少や渋滞緩和が期待される」としており、日本の各メーカーは2020年東京五輪までの実用化を目標に掲げている。
米国ではハッカーがIT車を「乗っ取り」の報道も
ただ、自動運転車といっても、加速やハンドル操作、ブレーキなどの一部機能を自動化する「安全運転支援システム」から、ドライバーが全く関与しない「完全自動走行システム」まで様々あり、自動化の程度に応じて4段階に分けられている。すでに衝突軽減ブレーキなど自動化技術の一部は市販車にも導入されているため、政府は自動化の段階が上がるにつれ、それに対応できるよう法律などを整備する必要がある。
警察庁が設置した検討委員会の会合では「カメラで読み取る車線が消えていて事故が起きた場合はどこの責任か」「地図情報が更新されずに事故が起きたら責任はどうなるのか」といった意見が出たという。人間が運転する際には想像できなかったような課題が出てきており、これから慎重に問題点を洗い出し、論点を整理したうえで法整備の議論を本格化させる。
一方、米国ではIT化された車をソフトウエア開発者らが乗っ取ったとする報道が出るなど、高度化した車へのハッカー攻撃も懸念されている。自動運転車の開発が進めば進むほどサイバーセキュリティー対策も軽視できない問題となっていくだろう。