震災の津波で海に流された後に奇跡的に救助された宮城県気仙沼市の「漂流犬」が亡くなっていたことが分かった。テレビで映像が流れ大きな話題になっただけに、ネット上では、犬の死を悼む声が次々に上がっている。
「あのときは良かったですが、今回は運がありませんでしたね」
震災復興事業関連のダンプカーにはねられた?
漂流犬「バン」の飼い主の気仙沼市本吉町の建築設計業、小野寺勝さん(62)は、J-CASTニュースの取材に対し、残念そうにこう話す。
バンは、雑種の雌犬で、2011年の震災当時は2歳だった。当時の報道によると、震災から3週間後の4月1日に海上保安庁のヘリが海に流された民家の屋根の上にバンがいるのを見つけ、バンはこの日のうちに救助艇に助けられた。飲まず食わずだったが、ケガはなかった。
その後、バンは、宮城県動物愛護センターに保護された。小野寺さんの家族は、NHKのニュースで救助の映像を見てバンが生きているのを知り、3日後にセンターで再会を果たした。家族が近づくと、バンは、うれしそうに何度も吠え、家族もバンを抱き締めて、「絶対離さずに、大切に飼いたいです」と喜んでいた。
ところが、小野寺さんによると、2014年1月のある日の深夜23時ごろに「ドン」と大きな音がしたので、家族が気になって外に出てみると、自宅前の国道45号線でバンが無残な姿で横たわっていた。だれも見ていないので分からないそうだが、事故の状況から、震災復興事業関連のダンプカーにはねられたのではないかという。その後、バンは家族の手で手厚く埋葬された。
バンが亡くなったことを、地元の河北新報が2015年11月2日に報じると、ネット上では、「ああ、あの犬か 気の毒に」「運命は過酷だな」「ご冥福を祈ります」と次々に書き込まれた。
バンが国道まで行っていたことについて、小野寺さんは、次のように説明する。
なぜかフェンスの扉を壊して飛び出す
「鎖やひもでつないでいたわけではありませんが、犬小屋の周りを鉄のフェンスで囲っていました。フェンスの扉にはカギをかけておきましたが、バンは、扉を壊して開けたらしいんですよ」
その理由については、小野寺勝さんも分からない様子だ。
「地震があったわけではなく、震災もずいぶん前のことです。バンがなぜ深夜にそんなことをしたのかは、今でも不思議ですね」
震災のときは、バンは、同じようにフェンスに囲まれた犬小屋にいて津波に流されたが、鎖やひもでつながれていなかったため、生き延びた。今回は、つながれていなかったため、災難に巡り会ってしまった形だ。
しかし、小野寺さんや家族は、心の支えになってくれたとバンに感謝している。震災後に自宅の修繕をするなど生活の立て直しに苦労したときも、バンが一緒にいてくれたからだ。
バンに代わって、15年5月からは柴犬を飼い始めた。ペットショップで買った1歳弱の雌犬だ。今度も、3人の子供たちがテレビアニメにちなんで犬の名前を付け、「ギン」と呼んでかわいがっている。