体脂肪を減らすには、運動を始めるしかない――。ダイエットを続ける36歳男性、木村清志さん(仮名、以下キヨシさん)が次の段階に進むために決意を固めた、はずだった。
約束から1週間、キヨシさんはニコニコ顔で登場した。開口一番出てきた言葉はこれだ。「最近やせましたねって、よく言われるんですよ」。
「もう、ごめんなさいと言うしかない」
いまや「キヨシメニュー」となったランチの定番は、マグロ丼プラス「から揚げの代わりにキャベツ大盛り」定食だ。週に1度は通っているその店で、女性店員から「やせましたね」と声をかけられたとウキウキ。
キヨシさん「それだけじゃないですよ。取引先でも『ほっそりした』と言われて。少し前はパツパツで履けなかったズボンが、今では余裕です。うれしくて」
特に聞いてもいないのに、しゃべりがとまらない。ダイエット開始当初は身長178センチ・体重83.5キロだったが、今回は体重78.5キロまで落ちた。目標は「半年で10キロ減」だが、すでに半分の減量を達成したことになる。
ただ、最近の課題は体脂肪だ。順調に減ってきた体重とは逆に、体脂肪率の数値はこのところ上昇傾向にある。改善への一歩は踏み出せたのか。
編集部「さて前回の宿題ですが、週末の家事の手伝い、できましたか」
キヨシさん「いやあ、実はすっかりソファーでのんびりしちゃいました」
編集部「ということは、食器洗いや洗濯は...」
キヨシさん「全然やってません。もう、ごめんなさいと言うしかないです」
聞けば、一段落した仕事がまた忙しくなり、休日はつい気が抜けたのだという。同情できなくもないが、多忙であればずっと足踏み状態になってしまう。
食事だけでは無理、運動でエネルギー消費が必須
食生活はどうか。朝食は、毎日ジュースを飲めるようになってきたという。さらに朝出社した後、パンを食べる日もあったそうだ。徐々に習慣化しており、この点は進展している。
一方、夕方に軽い食事をとって夜遅くに食べる量を減らす「分食」はなかなか身につかない。「どうしても夕方、食べる気にならない」というのだ。それでも夕食時には、「妻が『野菜をもっと食べて』と、蒸した野菜のメニューを1品加えてくれました」。家族のサポートを感じたキヨシさん、夜遅い食事でカロリーが高めだと感じた際は、自主的に分量を少なくするよう努力した。
それでも、現実は厳しかった。ある日計測した体脂肪率は、ダイエット開始後「最悪」となる24.5%を表示した。
キヨシさん「思わず『2度見』しましたよ、なんでこんなにって」
この週は仕事で外出が多く、ランチも出先で急いでかきこまねばならない日が続いたのも不運だったかもしれない。しかも、よりによって「先輩が教えてくれたおいしいラーメン店に行ってしまいました」。
やはり、食事だけでダイエットを完遂するのは難しい。体を動かしてエネルギーを消費するのが必須となってきた。あとはキヨシさん自身の意識改革を待つしかない。
このままではいけない、という自覚はキヨシさんも持っている。だが「ヒザが痛い、だから動きたくない、というのを言い訳にしてしまって」とバツが悪そうな顔で答えた。
ご褒美を用意するのが運動継続のコツ
「家事を手伝う」は公約した以上、継続して挑戦することを再確認。合わせて、管理栄養士からも勧められたウォーキングを取り入れられないか。
キヨシさん「こう見えて、意外と歩いてますよ。今日も外出先から会社に戻る際、地下鉄に乗らずに20分ほど歩いてきましたから」
編集部「それはなかなか...でも、確か先輩社員に誘われたからでしたよね」
キヨシさん「ええ、いや、その...」
そう、キヨシさんに求められるのは自発的に歩く姿勢だ。できれば通勤の往復で、ひとつ手前の駅から乗り降りをしてほしい。もうひとつは、家族思いのキヨシさんだけに「子どものため」に一緒に散歩したり、外で遊びながら体を動かしたりするのはどうか。
継続できるかもカギとなる。もっとも、ダイエットはしたいが運動が続かないと悩む人はキヨシさんだけではないだろう。スポーツジム大手、コナミスポーツのウェブサイトに、打開のためのヒントが書かれていた。脳科学者で、諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授の説明によると、運動を継続するには、例えば「やる気に関係するドーパミンの分泌を維持する」ために「行動と快感をセットにする」。具体的には、運動したら「楽しかった」と言ったり、誰かにほめてもらったりするとよいそうだ。運動したらご褒美を用意するというわけだ。
具体的な目標を持つのも重要。週3回、30分歩くといった具合だ。また安易にクリアできる目標を設定せず、「目標達成率が50~75%」程度にハードルを上げておいた方がドーパミンの分泌が最大化して続けやすくなるという。
キヨシさん、ここが正念場だ。