第2次世界大戦後の米国――。戦争には勝ったが、肥満や糖尿病、心血管病の患者が国中にあふれ社会問題になった。戦時中、戦闘遂行のために兵士に高カロリーの食事を与えた。帰国した兵士が同じ食生活を続けたために起こった「国民病」だった。
「人々を健康にする食生活とは何か」。米の医学者は世界中の食文化を研究し、地中海のクレタ島に注目した。住民は貧しく、食料も粗末なのにみな健康で長生きしている。多くの研究からその秘密を探り、米政府が「世界最良の健康食」として国民に推奨しているのが「地中海料理」だ。
クレタ島やギリシャ、南イタリア、フランスの伝統料理
地中海料理は、クレタ島をはじめギリシャや南イタリア、フランスなど地中海沿岸の人々の伝統料理である。1958年から10年間にわたり米の研究チームが、世界7か国にまたがる大規模な疫学調査を行った結果、その健康効果が実証された。地中海諸国(イタリア・ギリシャ)では、北欧や米国に比べ心筋梗塞など心血管病の発症率が3分の1以下で、がんなどすべての病気の死亡率が一番低かった。
ダイエット効果の面でも研究成果が出ている。2008年に米医学誌に発表された論文によると、糖尿病患者を3つのグループに分けて、(1)地中海食(オリーブオイルや魚介類、野菜、豆が中心)(2)低脂肪食(3)炭水化物が少ない糖質制限食(いま話題の糖質制限ダイエット食)の3種類を2年間食べさせて比較した。最も体重が減ったのが糖質制限食で、2番目が地中海食、3番目が低脂肪食だった。ところが、糖質制限食はリバウンドが大きく、最終的に地中海食とほぼ同じ減少ラインに戻った。低脂肪食もややリバウンドした。地中海食だけがリバウンドがなく横ばい状態が続いた。自然に無理なくやせられるのだ。