やたらに大声を出して威張り散らす――。いますねえ、そんなイヤ~な男が。ところが、そういう男に限って「アソコ」のサイズは小さく、なんと控えめな声の男の6分の1の大きさしかない。胸のすくような、さみしいような研究が2015年10月22日、米科学誌「カレント・バイオロジー」に発表された。
ただし、中南米のジャングルに生息するサルの1種「ホエザル」の仲間の話だ。
10キロ四方まで届く野太い大声でメスをひきつける
ホエザルはネコくらいの大きさの小型のサルだが、オスは、10キロ四方まで届く野太い大声を出してメスをひきつける一方、他のオスや天敵を威嚇することで知られる。オスの口の中にある舌骨が風船状にふくらみホーンのようになっており、空洞が大きいほど大声を響かせる。
英ケンブリッジ大や米ユタ大らの国際チームが、オスの声の大きさと睾丸の大きさとの関連を調べた結果、声の大きなオスほど睾丸が小さく、逆に声の小さなオスほど睾丸が大きいことがわかった。
いったい、どうやって調べたのか。チームは欧米の博物館から集めたホエザルの舌骨225個を3次元(3D)レーザースキャンにかけて、空洞の容積を測り、声の大きさのデータにした。睾丸の大きさは、学会で発表されたホエザルに関する文献から収集。さらに、動物園で飼われている21匹のサイズをノギスで測った。すると、最大オスの舌骨は最小のオスの14倍もあり、最大のオスの睾丸は最小のオスの6.5倍もあった。
バリトンのオスはハーレム、独身オスは睾丸のサイズで勝負
なぜこうも劇的に差があるのだろうか。チームリーダーのケンブリッジ大のジェイクダン博士らはこう説明している。
「人間の女性がバリトンの男性に惹かれるように、ホエザルのメスにとって、オスの野太い声は魅力的です。一方、睾丸が大きい方が精子はたっぷりあり、自分の子孫を残す確率は高くなる。そこで、オスの生殖に関する進化の戦略は、声を大きくするか、睾丸を大きくするかの二者択一になります。両方とも大きくするのは、生物学的エネルギーを過剰に消費するのでコスト的に無理。声を大きくしたいオスは、睾丸が小さくなるという代償を支払ったのです」
その犠牲の甲斐があってか、声が力強いオスは数匹のメスを従えてハーレムを作る。メスは、バリトンに惹かれると睾丸の小ささが気にならなくなるらしい。一方、睾丸の大きなオスは独身を余儀なくされ、6~7匹のオスだけのグループを作る。群れの周辺には独身メスが集まってくる。メスはフリーセックスなので、オス同士の自由競争となる。ここで、メスに自分の子を生ませられるかどうかは、精子力の差、つまり睾丸の大きさが勝負になるわけだ。
ホエザルも人間も同じ霊長類の似た者同士だ。上司に大声で叱られたアナタ、上司のズボンの中を想像して、ちょっぴり溜飲を下げてはいかが。