バリトンのオスはハーレム、独身オスは睾丸のサイズで勝負
なぜこうも劇的に差があるのだろうか。チームリーダーのケンブリッジ大のジェイクダン博士らはこう説明している。
「人間の女性がバリトンの男性に惹かれるように、ホエザルのメスにとって、オスの野太い声は魅力的です。一方、睾丸が大きい方が精子はたっぷりあり、自分の子孫を残す確率は高くなる。そこで、オスの生殖に関する進化の戦略は、声を大きくするか、睾丸を大きくするかの二者択一になります。両方とも大きくするのは、生物学的エネルギーを過剰に消費するのでコスト的に無理。声を大きくしたいオスは、睾丸が小さくなるという代償を支払ったのです」
その犠牲の甲斐があってか、声が力強いオスは数匹のメスを従えてハーレムを作る。メスは、バリトンに惹かれると睾丸の小ささが気にならなくなるらしい。一方、睾丸の大きなオスは独身を余儀なくされ、6~7匹のオスだけのグループを作る。群れの周辺には独身メスが集まってくる。メスはフリーセックスなので、オス同士の自由競争となる。ここで、メスに自分の子を生ませられるかどうかは、精子力の差、つまり睾丸の大きさが勝負になるわけだ。
ホエザルも人間も同じ霊長類の似た者同士だ。上司に大声で叱られたアナタ、上司のズボンの中を想像して、ちょっぴり溜飲を下げてはいかが。