旭化成建材が手がけた住宅や公共施設で、杭打ち工事のデータ偽装が次々明らかになった。騒動の発端となった傾いた横浜市のマンションと担当者は異なり、少なくとも3人の担当者がデータ偽装にかかわったことになる。
相次ぐデータ偽装は旭化成建材だけの問題なのか。専門家は「業界全体の問題で、全国的にありえる話だ」と言い切る。
現場でデータの管理はおざなりに
横浜市は2015年10月29日、旭化成建材が杭打ち工事をした公共施設1件でデータ偽装を確認したと発表。杭の先端部分を地盤に固定するためのセメント量のデータに偽装があったという。
北海道では釧路市の2棟の道営住宅で施工データの流用が発覚した。道が独自に行っていた調査で杭打ち工事の電流計の記録に不審な点が見つかった。2棟の工事責任者は同じ社員だった。
騒動の発端となった横浜市の傾いたマンションの現場責任者を含め、少なくとも3人の現場責任者が杭打ち工事のデータ偽装にかかわったことになる。また、発表されていないものでも、データの不正はさらに数十件に上ると新聞各紙が報じている。
日本各地の現場で次々明るみになったことから、データ偽装は旭化成建材で常態化していたとみられる。しかし、同様の偽装は同社だけの問題なのだろうか。
これまで2万件以上の工事に携わってきたという、建築構造調査機構の代表理事で構造設計1級建築士の仲盛昭二さんは、J-CASTニュースに対して「同じようなことは全国的に行われているでしょう」と断言。旭化成建材だけの問題ではないという。
杭打ち工事の現場では、作業員のカンや感覚に頼って進められることが多い。そのためデータの管理はおざなりにされてしまうことがあるようだ。
発注者の黙認もあった?
データ偽装が行われてしまう背景については、工期のプレッシャーが影響している。
横浜市のマンションのケースでは、支持層に打ち込まれた杭の長さが2メートル足りなかった。しかし、より長い杭をあらためて発注するとなると、新しい杭が届くまで1~2週間は工事が遅れてしまう。
「気づいても面倒なことを言ってくれるな、という現場の雰囲気もありえる」
と仲盛さんは言う。
弁護士や建築士が会員の「欠陥住宅関東ネット」事務局次長の谷合周三弁護士も同様に指摘する。偽装は業界全体の問題だとして、
「マンションなどの販売時期や工事の費用は決まってしまっている。納期に間に合わせるため、多少のミスや不具合があってもやり過ごすことはありえる。偽装は末端の施工担当者がやったことだとしても、発注者の黙認があったと考えられます」
とJ-CASTニュースの取材に述べた。