2014年に全米で1000人以上が感染して猛威をふるった「謎のウイルス」と呼ばれる「エンテロウイルスD-68型」の感染が日本でも確認され、2015年10月27日、厚生労働省が全国調査を始めた。
2015年8月以降、発熱やせきなどの症状が出た後に原因不明の体の麻痺(まひ)を起こす子どもが相次いで報告されており、10月27日までに全国で約50人近く(0~11歳)にのぼり、その一部から「エンテロウイルスD-68型」が検出された。ただ、麻痺がこのウイルスによるものなのか、因果関係はわかっていない。
国内では2005年以降200件以上が報告
エンテロウイルスD-68型はぜんそく症状を引き起こす呼吸器疾患で、乳幼児や子どもが発症しやすい。発熱やくしゃみ、鼻水などの軽症から、重い場合は気管支炎や肺炎、呼吸困難を引き起こす。重症化すると筋肉が虚弱化し、脳神経機能に異常をきたし、麻痺が残るケースもある。2014年8月~2015年1月にかけて米国で大流行した時は1153人が感染し、うち14人が死亡したという。その一部で麻痺症状がみられた。
「エンテロウイルスD-68型」は、国内では2005年以降200件以上が報告されている。2015年は、8~9月にかけて東京都や埼玉県などで気管支ぜんそくのような症状で入院する乳幼児が急増。国立感染症研究所で検査した結果、エンテロウイルスD-68型が検出された。患者の中にはICU(集中治療室)への入室や人工呼吸での管理が必要なケースも発生している。
専門医は「8~10月の短期間で50例近く出たというのは聞いたことがない。感染を防ぐワクチンはなく、症状を和らげる治療しかない。このウイルスはインフルエンザと同様、飛沫(ひまつ)などで感染するので予防には手洗いを徹底してほしい」と呼びかけている。