ハイブリッドは5年後に累計1500万台に
トヨタの環境目標は6つの「チャレンジ」からなるが、その1番目に掲げ、トヨタが最も重視しているとみられるのが「新車CO2ゼロチャレンジ」だ。2050年に新車の走行時に排出するCO2を2010年比で90%削減する、というもので、具体的には、HV、プラグインハイブリッド車(PHV)やFCVといったエコカーの割合を増やし、ガソリンエンジン車を減らすのが目標だ。航続距離の拡大が課題の電気自動車(EV)についても、「高温耐久性に優れる特性を持つ全固体電池など、次世代電池の開発を推進」することで、課題を克服するとしている。
2020年に向けた短期的な目標でも、FCVとHVの販売拡大を掲げた。2014年12月に発売したFCV「ミライ」は、2017年に生産体制を年間3000台規模とし、2020年に販売台数を年間3万台以上に引き上げる。このうち半数程度は日本国内を想定し、国内の月間販売台数を少なくとも1000台レベルとした。量産効果によって700万円程度の現状の価格を大幅に引き下げることも狙う。
HVについては、2020年までに年間150万台の販売を目指す。これは2014年実績より2割近く多い水準。トヨタは1997年に世界初の量産型HV「プリウス」を発売し、HVの累計販売台数は2015年7月末に800万台を突破したが、2020年までに2倍近い1500万台とする目標だ。HVの販売はこれまで日本や北米が中心だったが、新興国や欧州でも販売を増やしたい考え。HVの部品はFCVやEVに活用できるものも多く、さらなる量産効果をFCVやEVにも及ぼすことも狙う。
ただ、チャレンジといっても、電気自動車(EV)よりはHVとFCVに傾斜している印象が強く、現在のトヨタの状況を反映しているともいえる。ディーゼル車の排ガス不正問題が起きた独フォルクスワーゲンはEVに軸足を移すことを表明しているのとは対照的だ。
「究極のエコカー」と呼ばれるFCVも、水素が「燃料」とは言え、現在は水から水素を作るのではなく、天然ガスなどの化石燃料を分解して水素を作っている。その方が安価だからだが、その生産過程でCO2が発生する。本当の「究極」を求めるには、水から太陽光のエネルギーを使って水素を生成するといった抜本的な技術革新が求められる。