「ウインナーソーセージ3本分、あるいは厚切りハム2~3枚分の加工肉を毎日食べるだけで大腸がんのリスクが18%上がる」
J-CASTヘルスケアでも報じた、世界保健機関(WHO)の専門組織「国際がん研究機関」(IARC)が2015年10月26日に発表した報告書は、世界中に衝撃を与えて猛反発が広がっている。
最悪の発がんレベルの根拠に説明なし
翌10月27日には、さっそく食肉輸出国の首脳たちのブーイングが相次いだ。バーナビー・ジョイス豪農相は公共ラジオでこう語った。
「タバコとソーセージが同じだなんて、お笑い草だ。現代ではすべての発がん性物質をさけて生活することは不可能だ。WHOが指定するもの全部を取り除いたら、洞窟生活に戻るしかない。がんと関係あるものを避けたければシドニーの街路に出るなということだ。人生でできることは何もなくなるだろう」
ドイツのクリスチャン・シュミット農相もこんなコメントを発表した。
「たまにソーセージにかじりつくことを怖がる必要はない。何でもそうだが、重要なのは摂取量だ。何かを食べ過ぎたら、いつだって健康に悪い」
IARCの報告書のあいまいな姿勢も問題になっている。5段階ある発がん性危険レベルで、加工肉をタバコやアルコール、アスベストなどと同じの最悪の「グループ1」に指定したが、「約800の論文を分析した結果、十分な証拠が得られた」とするだけで、加工肉ががんを発症させるメカニズムや、どの程度の摂取量なら安全かなどは説明していない。
しかも、「加工肉の過剰摂取が原因のがん死亡者は世界中で年3万4000人。喫煙が原因の100万人、アルコールの60万人、大気汚染の20万人に比べるとかなり少ない」というデータまで示した。
このため、各国の食肉業界は「無責任だ」と怒り心頭だ。北米食肉協会では「最初から特定の結論を導き出すためにデータを歪曲した」という声明を、業界寄りの膨大な論文とともに発表、バリー・カーペンター会長は「IARCががんの原因にならないと明言しているのは、ヨガの際にはくパンツに含まれる化学物質だけだ」と語り、何でも発がん性に結びつけていると批判した。
中国肉類協会副会長の陳偉氏は「この報告は非科学的である。我が国の四川省と湖南省では、肉の塩漬けや薫製がよく作られているが、大腸がんが頻発する地域ではない」と反論した。