大阪女児死亡火災、ガソリン漏れで自然発火? 欠陥ならメーカーに責任ないのか、の指摘も

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   1995年に大阪市東住吉区で当時小学6年生の女児が亡くなった民家火災をめぐり、車からのガソリン漏れが原因なら、「製造者に責任はないのか」と指摘する声が上がっている。

   元被告が乗っていたのは軽ワゴン車「アクティ・ストリート」。メーカーの本田技研工業は「車に不具合があったとは認識していない」と話す。

  • 車庫の中で何が起こったのか(画像はイメージ)
    車庫の中で何が起こったのか(画像はイメージ)
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「弊社としては不具合があったと認識していません」

   紀藤正樹弁護士は2015年10月26日、自身のブログで、11年5月に実施された弁護団の火災再現実験に触れながら、「(当件は)明らかに車の欠陥、製造者責任の問題」と指摘した。

   実験では火災が起こった当時の状況を忠実に再現した。その結果、元被告の車から漏れたガソリンが風呂釜の種火に引火して自然発火する可能性があることが分かった。「放火殺人」というそれまでの警察、検察側の言い分に疑いが生じ、再審へと大きく傾いた経緯がある。

   火災が起きたのは1995年7月22日。当時11歳だった青木めぐみさんが入浴中、風呂場のすぐ隣の車庫から出火した。大阪府警は直接的な証拠のないまま「放火殺人」として、母親の恵子さんと内縁の夫だった朴龍晧(ぼくたつひろ)さんを同年9月に逮捕する。弁護団は1審から「朴さんの車からガソリンが漏れて自然発火した」と主張したものの、裁判所は弁護団の主張を退けた。結局、2人は2006年に無期懲役判決が確定している。

   朴さんの乗っていた車はホンダの軽ワゴン車「アクティ・ストリート」だった。火災の原因がガソリン漏れによる自然発火であれば、大きな問題ではないか。そんな声も聞こえてくる。実際、15年10月23日の大阪高裁判決でも「車からガソリンが漏出したことによる自然発火だった可能性が否定できない」と指摘されている。

   メーカー側はどう認識しているのか。本田技研工業はJ-CASTニュースの取材に対し、当車種のリコールはしていないと明かした上で、「弊社としては不具合があったと認識していません。ただ、裁判に関しては全面的に協力していきます」としている。

一体誰が責任を負担するのか

   車名やメーカー名は現時点でほとんど報じられていない。前出の紀藤弁護士は「メーカー名が分からないと検証できないので、本来報じられるべきです。消費者ならここが知りたい情報です。今も走っているとすれば、新たな事故が起こる可能性もありますよね」と話す。

   真偽は確認できないが、朴さんの所有車以外の同車種でもガソリン漏れが起こっているという情報もある。15年10月24日付け産経新聞大阪版朝刊や27日付け東京新聞夕刊によると、再審を認めた12年の大阪地裁判決後、千葉県の男性から「自分の車でもガソリンが漏れる」との情報提供が弁護団に寄せられ、その後の調べで青森、三重、滋賀の住民が持つ車でも同様の漏出が確認されたという。ただ、すべてが「アクティ―・ストリート」だったかどうかは分からない。

   製造者責任法(PL法)では、欠陥車両による事故で人の身体が傷ついた場合、車両の欠陥と事故の因果関係を立証できればメーカー側に損害賠償責任を負わせられる。ただ、東京PL弁護団のホームページによると「(法施行された)1995年7月1日以前に流通に出された製品」は、損害の賠償を求められない。加えてすでに火災から20年が経過しており、仮に立証できたとしても、制度上、損害賠償を請求できない。

   紀藤弁護士はこの点にも触れ、「理屈から言えば製造者責任は問えません。当件が『冤罪』だったとして、一体誰が責任を負担するのか。現在の状況はとても不正義と言えます」と話した。

   一方、事件の主任弁護士を務める斎藤ともよ弁護士に「製造者責任」について意見を求めたところ、「まだ裁判が続いておりますので、何もお話しできません」とのことだった。

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