iPhone(アイフォーン)やiPad向けの基本ソフト(OS)、iOSのバージョンアップが米国で集団訴訟に発展している。バージョンアップ後は、無線LAN(Wifi)での通信状態が悪くなると、3Gや4G(LTE)と呼ばれる携帯電話網の電波に自動的に切り替わる機能が新たに搭載された。ただ、3G/4Gでは事前に契約した一定量のデータを使い切ると通信速度に制限がかかって事実上使い物にならなくなるのが一般的だ。
原告は、新機能では3G/4Gに自動的に切り替わることを明示しなかったことで想定よりもデータが多く消費されると主張。なんと請求額は500万ドル(約6億円)にも及ぶ。
3G/4Gに切り替わっていることに気づかずに使用
この新機能「Wifiアシスト」は、2015年9月中旬に配信が始まったiOS 9に初めて搭載された。本来ならば、Wifiのアクセスポイントを離れても通信を途切れさせないための便利な機能だが、思わぬ「副作用」が出た。画面上にはWifiと3G/4G、どちらの電波で通信しているかが表示されているものの、それを意識しながら使っている人は少ない。そのため3G/4Gに切り替わっていることに気づかずに予想外にデータを消費してしまう人もいるようだ。
日本国内での契約の場合、(1)締日までの1か月あたりのデータ量が7GB(ギガバイト)を超えると128kbpsに速度が遅くなる。速度制限の解除には追加料金が必要(2)3日間に1GBまたは3GB以上使用すると制限がかかることもある、というケースが比較的多い。つまり、新機能で予想外に速度制限を受けたり、追加でデータの利用枠を購入せざるを得なくなったり可能性が高まるというわけだ。
こういった点をめぐり、早くも米国では訴訟が起こった。アップル専門のニュースサイト「アップルインサイダー」が2015年10月23日(現地時間)に報じたところによると、カリフォルニア州在住の夫妻が同日付でアップルを相手取ってサンノゼ地裁に提訴。原告は、想定外のデータ使用量に関する「洪水のような量の記事」がネット上に出回るまで、アップルが注意喚起をしなかったと主張。あらゆる利用者が使いすぎたデータの代金をアップルが払い戻すべきだとしている。原告が実際にどの程度の経済的損失を受けたのかは明らかではないが、「論争にかかる全コスト」として500万ドルを請求。いわゆる懲罰的損害賠償をめぐる訴訟だとみられる。
なお、日本語版のiOS9では、「設定→モバイルデータ通信」と移動し、一番下までスクロールすればWifiアシスト機能の操作ができる。