「無理なものは無理」 蜜月時代も終焉か
だが、経済界では政府のあからさまな圧力へ反発と戸惑いが広がっている。経団連の榊原定征会長は、この会合で「企業が積極果敢にリスクをとって、投資拡大に取り組むように呼びかけを強化する」としつつ、「投資拡大のためには法人実効税率20%台への早期引き下げが必要だ」と逆注文し、政府の環境整備が先との認識を示した。
大手メーカー幹部は「人口減少で市場拡大が見込めず、働き手も不足している日本国内に投資しろと言われても、無理なものは無理だ」と、政府の要請を切り捨てる。また、政府には、過去の円高局面で海外移転した生産拠点が円安によって国内回帰するとの期待も強いが、「一度移転した拠点はそう簡単には戻せない」(別の大手メーカー幹部)との声が大勢だ。
さらに、中国経済の減速を受けて世界経済の雲行きも怪しくなってきた。企業の設備投資計画自体は高水準を維持しているものの、「企業は外需の動向などを見極めようと、投資判断に一段と慎重になっている」(アナリスト)。
政府は今後の官民対話で、法人減税や規制改革の「アメ玉」をちらつかせつつ、経済界に設備投資拡大の具体策を示させたい考えだ。甘利経済再生担当相は初会合後の記者会見で「投資についてのコミットメント(約束)が弱ければ、さらなる強い要請をかけていく」と語気を強めた。しかし、景気先行き懸念が強まる中、経済界から満額回答を得るのは一段と難しくなっている。
2016年夏の参院選や2017年4月の消費税率10%への引き上げに向け、再び「経済最優先」を掲げた安倍政権だが、これまでにもまして民間の経済活動に介入する経済政策運営手法への批判が高まれば、経済界との蜜月も終焉を迎えるかもしれない。