国連の人権専門家が日本に対し、子どもに関して過度に性的な表現をした漫画やアニメを規制するよう求めた。
ただ、日本のネットでは早くも「表現の自由」を理由に反発する声が上がっている。もし実際に政府が検討を始めるとなると、改正児童買春・ポルノ禁止法が制定された当時のように議論が再燃しそうだ。
改正児童ポルノ法で漫画などの創作物は対象外だった
国連「子どもの売買、児童買春、児童ポルノ」特別報告者のマオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏は2015年10月26日、日本記者クラブで記者会見し、1週間の日本滞在中に行った調査について報告した。
15年7月から施行された、改正児童買春・ポルノ禁止法や取り締まりについて一定の評価をする一方、
「あまりにも過激な内容の漫画は法律で取り締まり、禁止すべきだと考えている」
と述べた。
改正児童ポルノ禁止法では、18歳未満が性的な部分を露出や強調した写真や映像を所持することが禁止された。しかし規制対象は実在する児童を描写したものに限られ、漫画やアニメ、ゲームなどの創作物は含まれなかった。漫画家や出版社が「表現の自由」が制限されると反発した経緯があったからだ。
ブーア=ブキッキオ氏はこうした議論があったことを踏まえ、
「表現の自由や情報公開の自由がある一方で、子どもを守る必要がある。両者のバランスを取るのはデリケートで難しい」
とコメント。その上で
「子どもに関するすべてのコンテンツを取り締まれ、と言う訳ではない。ただ、あまりに目にあまるような、子どもをテーマにした漫画は取り締まるべきだと考えている」
と話した。
検討を始めれば、議論が再燃するのは必至
ブーア=ブキッキオ氏の発言は、国連が正式に日本に対して法整備を要求したものではなく、会見の中で見解を述べたものだ。児童ポルノ問題で、規制に反対の立場から発言してきた漫画家の赤松健さんは、ツイッターに「若干バランスを取った」と書きこんだ。
しかし、実際に政府が漫画やゲームを規制対象にすると再び検討を始めれば、議論が再燃するのは必至だ。
たとえば日本書籍出版協会は児童ポルノ禁止法の改正案が参院で可決された14年6月、
「『児童ポルノ』の定義が依然曖昧なまま、『単独所持』が禁止されたことは、児童保護という本来の目的から大きく逸脱し、表現規制に繋がる危険性があり、到底容認できない」
と声明を発表していた。
今回の発言にもツイッターなどネットでは「表現の自由」を理由に、
「取り締まるのは実写だけでいい」
「2次元と3次元を同等にするなよ」
「誰がどう見て児ポと判断して禁止するか曖昧なものには反対」
と反発する声が上がっている。
ただ、実際にネット通販サイトなどを見れば、少女にしか見えないキャラクターが登場する、成人向け漫画やゲームが多数確認できる。「日本人として恥ずかしい」として規制を進めるべきだとするネットの書き込みも少なくない。