国立国会図書館に1冊6万円強もする趣旨が分かりにくい本が大量に納入されていると、ネット上で騒ぎになっている。図書館側は税金から、納入された本の半額を支払うことになるだけに、疑問の声も上がっている。
きっかけは、「亞書」というナゾの本がアマゾンで売られていると、2015年10月20日ごろにツイッターなどで話題になったことだ。
関連出版社だけで、計1000万円が支払われた?
ロシア人らしきアレクサンドル・ミャスコフスキーという著者名で15年2月から次々に出され、6万4800円もする本が計96巻まであった。いずれも新品を1冊だけ扱っていた。
その後、国会図書館にこの本が60巻まで納入されていることが分かった。国会図書館法第24条では、出版物は原則として1部を納本するよう義務付けており、その際は、代償金として、小売価格の半額を支払うことになっている。とすると、出版社側には計200万円ぐらいが支払われた計算だ。
ところが、出版社サイトでは、住所が東京都墨田区内になっていたが、実際は理容室の場所になっていた。また、著者名をネット検索しても情報がほかになく、出版社にメールしてこの本の一部を読んでみたところ意味不明の外国語らしき文字が連ねてあったとの報告がネット上で出た。
この出版社と同じ住所でいくつかの別名の出版社が本を出しており、言語別聖書とする本を1冊5万円ほどで、100冊ほど出していたことも分かった。ほかの本も、高価なものが多かった。国会図書館にもこれらの出版社から計400冊ほどが納本されており、仮にすべてが5万円とすると、計1000万円ぐらいが支払われていた計算になる。
真偽はまったく分からないが、ネット上では、「これ、出版社やりたい放題やん」「国会図書館側は中身見て検討しないのかよ」といった疑問の声が相次いでいる。
「頒布の実態があったのかは調査している」
国立国会図書館の広報係は、取材に対し、「出版物に当てはまるのか、広く頒布されているのか、といった条件で納本してもらうかを決めます」と取材に答えた。これは、同人誌や自費出版でも同じだという。
「亞書」という本については、60巻をすでに納入済みとした。その理由については、「この本は、ハードカバーで製本されており、簡易なものではありませんでした。また、ネット上でも頒布されていたのをこちらで確認しています」と説明した。
一方で、「本の内容では、価値判断していません」と明かした。ただ、ネット上で騒ぎになっており、「頒布の実態があったのか、などは調査しています」としている。これまで不当に高い小売価格で納本されて問題になったケースなどは、「存じ上げていません」という。
アマゾンでは、「亞書」は次々に削除されており、出版社サイトでは、10月26日から期間未定で臨時休業することが告知された。
高額の納本があることについては、国会図書館の納本制度審議会でも議論になっている。
3月25日の審議会では、図書館側は、納本の点数ベースでは取次経由の方が多いが、直接納入は高額のケースが多いため金額ベースでは7割も占めている、と明らかにした。すると、委員からは、「貴重な代償金予算を、本来の出版社ではないところに、こんなに払っている」と批判が出た。審議会の会長さえも、自分のところにも300万円もするセット本の宣伝があったとして、「金額がその半分だとしても150万円くらいの金を食っている」と指摘したほどだ。