おにぎりの具にシャケ弁、ふりかけの素......と、私たちに親しまれているサケ(鮭)。実は、認知症やがん、動脈硬化を予防するばかりか、学習能力を高めて、美容効果もテキメンという万能の魚なのだ。「泳ぐ栄養カプセル」といわれるサケに感謝して、もっとたくさん食べてあげよう!
サケの凄さ・その1は、老化を防ぐ奇跡の物質として最近注目を集めている「アスタキサンチン」が、豊富に含まれていることだ。人の体の中では、酸素と栄養が結びついてエネルギーが作り出される。それが活動の源となるわけだが、活動するたびに「活性酸素」が発生してたまっていく。いわば、車にたとえれば排ガスのようなもので、全身の細胞を酸化して錆びつかせ老化を進めてしまう。また、がんの引き鉄になるといわれる。この活性酸素の害から身を守るのが「抗酸化」作用のある物質だ。
大回遊して命がけで産卵する命の営みに奇跡の秘密が!
サケの赤身に含まれている赤い色素アスタキサンチンは、強力な抗酸化力があり、その効力は抗酸化作用のあるビタミンEの500~1000倍といわれる。ベニサケの切り身一切れで、ビタミンEの豊富なアーモンド1~2キロを食べた分の抗酸化力を発揮する。サケは大洋を大回遊して産卵のために故郷の川を遡上する。その時、莫大なエネルギーを使い果たすばかりか、魚の天敵である太陽光線を浴びて、体内に大量の活性酸素を発生させる。その活性酸素を除去して何とか命を守り、最後まで産卵を全うさせるために、他の魚より多くの量のアスタキサンチンを蓄えているのだ。
アスタキサンチンは、発がんを抑制し、脳の活性酸素を除去したり、傷ついた脳細胞を修復したりするよう働くから認知症予防が期待できる。アスタキサンチンがすごいのは、そのパワーだけではなく、脳内でも働くことができる数少ない抗酸化物質だという点だ。脳は最も重要な器官なので、入り口には「血液脳関門」いう関所があり、不用な物質ははじかれてしまう。ビタミンEやベータカロテンなどの抗酸化物質でさえ通れないのだ。
サケの凄さ・その2は、DHA(ドコサヘキサン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)という、体にとてもよい効果をもたらす2つの不飽和脂肪酸がたっぷり含まれていること。DHAには、脳や神経組織を活性化させて記憶力や学習能力を高める働きがある。一方、EPAには、中性脂肪と悪玉コレステロールを減らして、善玉コレステロールを増やし、血液をサラサラにする効果がある。また、風邪への抵抗力をつけるビタミンAや、カルシウムの吸収を助けるビタミンDも豊富だ。だからカルシウムを含む食品と一緒に食べるとよく、牛乳鍋がオススメ。
皮は丸ごとコラーゲン! コスメマニアにうれしいモノいっぱい
サケの凄さ・その3は、女性にうれしい美肌効果が抜群!ということだ。まず注目したいのが皮。皮のほとんどが、肌にうるおいとハリをもたらすコラーゲンでできている。サケは一定の場所に留まらずに回遊しているので、海の不純物や環境に左右されない。そこで、サケ皮からとれる「マリンコラーゲン」が、牛や豚を原料にしたものより、アレルギー性が少ない、吸収率が高い、など「良質で安全」として化粧品・医療分野で脚光を浴びている。皮にはカルシウムやビタミンB2も含まれているので、捨てずに食べてほしい。カリッと揚げて塩を振るだけで、お酒のつまみになる。
肉に含まれるDMEA(ジメチルアミノエタノール)という成分は、筋肉の弾力を助けて、肌をキュッと引き締める働きがある。脳の集中力を高めるため、プチうつを解消する効果も期待できそうだ。また、頭の部分にあるプロテオグリカンは、最近、「ヒアルロン酸より保湿効果が高く、乾燥肌にイイ!」といわれて、コスメマニアに人気の化粧品の原料成分だ。「キレイ」を意識して、生サケの頭をブツ切りにした三平汁を味わおう。
そもそも、こうした美容成分とは別に、アスタキサンチン自体に美白効果があるといわれる。肌の中の活性酸素を除去して、シミをつくるメラニン色素の形成を抑えてくれるからだ。
美容にも万能パワーを発揮するアスタキサンチンだが、弱点がある。高熱に弱く、サケを焼きすぎると壊れてしまう。ビタミンCと一緒に食べると吸収が増す。そこでビタミンCを含む野菜と一緒に、皮ごと入れたシチューや、ホイル蒸しがオススメ。また、アスタキサンチンは脂溶性なので、ムニエルなどもよい。