周囲に妊娠中であることを示す「マタニティマーク」のデザインを巡り、インターネット上で盛んに意見が交わされている。
きっかけの一つとなったのは、ダウンタウンの松本人志さん(52)の発言だ。松本さんは、ピンクのハートの中でお母さんが赤ちゃんを包み込むデザインを「幸せいっぱい過ぎる」と評し、これが周囲の反感を買っている可能性を指摘した。
松ちゃん「もうちょっとシリアスなほうが...」
おなじみのマタニティマークは、厚生労働省が2006年に発表した。お腹があまり目立たない妊娠初期の女性がマークのキーホルダー等を身に着けることで、周囲が配慮を示しやすくすることを目的としている。
誕生から10年目を迎え、認知度も徐々に上がってきているが、最近では「反感を買いそう」「席を譲れと言っているようで気が引ける」といった理由から使用を自粛する妊婦もいるという。ネット上でしばしば話題になる悪口や暴力の被害報告も自粛の動きに拍車をかけているようだ。
2015年10月25日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)では、この問題を取り上げ、出演者陣がさまざまな意見を出し合った。
そこで、子供が欲しくてもできない人らから嫌がらせを受けるケースがある...といった話が出ると、松本さんはこれを強く問題視。だが、その一方でマークのデザインに着目し、「ちょっと幸せいっぱい過ぎひんか?」と切り出した。
「もしかしたら反感買うのかもしれんね。なんかすっごい温かい(イメージ)でしょ?これになんかちょっとイラっとする女性がいるのかもしれないですね」
と、温かみ溢れる絵柄が反感を助長させてしまっている可能性を示唆し、「もうちょっとシリアスなほうがいいのかもしれへん」と提案した。
同マークは恩賜財団母子愛育会埼玉県支部がデザインしたもの。厚労省による公募に寄せられた1600以上の作品から選ばれた。ピンクのハートの中でお母さんが赤ちゃんを優しく包み込む姿を描いたもので、松本さんの言う通り「幸せ」で「温か」な印象を受ける絵柄だ。
アイデア続々「記号化」「妊娠していますって文字だけ」
マークのデザインを巡っては、かねてから「かわいい」と支持する声も多いが、「幸せそうなデザインに抵抗あって付けられなかった」「横から見た妊婦さんなど、シンプルなマークがよかった」といった妊娠経験者の書き込みもちらほら上がっていた。
松本さんの発言などをきっかけに、インターネット上にはさまざまな声が寄せられることとなった。女性限定掲示板「GIRL'S TALK」では、発言に関連したコメントが1000件近く集まった。「確かに可愛いんだけど、他人には幸せの押し売り感はあるかもね」「妊娠に限らず人の幸せが妬ましく思う時はあるだろうね」などと同意する意見は少なくなく、
「シンプルに記号化してもいいかも」
「もっと抽象的にしてもいいと思う」
「『妊娠していますって文字だけでも良いかも」
「つわりでゲッソリしてるデザインにしたら」
「ほんわかイラストなしで『妊』って渋く漢字一文字とか」
といった新デザインの提案もあった。
一方で「嫌がらせする人に問題がある」「これでイラっとする人が多い世の中のほうが嫌」などと絵柄以前のところに触れ、妊婦が周囲の反応に気を使わなければならないことを憂うコメントも目立った。
だが残念なことに、妊婦が気を使わずにいられないのが現状のようだ。妊娠中の産婦人科医、宋美玄さんも5月のブログに「マタニティマークをつけてみて、通勤電車で座ってる人の前に立ちにくくなりました。なんか譲ってほしいってアピールしてるみたいな気がして。気を使いすぎですかねー」と使用時の居心地の悪さをつづっていた。
マーク誕生から10年目を迎える中、厚労省母子保健課では「マークの趣旨が正しく伝わるよう啓発に努める」としている。