徘徊(はいかい)する恐れのある認知症の人に小型の送信機を身につけてもらい、地域に設置した装置を使ってすぐに居場所を特定するシステムを2015年10月19日、大阪市立大学の辻岡哲夫准教授がIT企業ヴァイタル・インフォメーション(東京・新宿)と共同で開発、発表した。
これまでも、携帯電話網やスマートフォン(スマホ)のアプリを使った見守りシステムが検討されてきたが、(1)家族による見守りは体力・精神面の負担が大きい(2)携帯電話網のシステムはコストがかかるうえ、GPS(全地球測位システム)は屋内では使えない(3)携帯電話やスマホはバッテリー駆動時間が短いし、重たくて高齢者が嫌がる、などの難点があった。
今回開発された「地域自律型ワイヤレス見守りシステム」は、まず縦61ミリ×横43ミリ×厚さ11kmミリ、重さ22グラムの小型送信機を認知症の人のカバンや衣服に縫い付けてもらう。携帯の3分の1ほどの大きさで、手のひらに収まるサイズだ。数キロ四方程度の地域内に数個の基地局を設置、基地局が送信機の電波を受信し、瞬時に情報をサーバーを通じて見守り者(家族や親族、施設の人など)に伝える仕組みだ。見守り者はウエブを通じてリアルタイムで居場所が確認できる。通信には特定小電力無線を使い、送信機と基地局1台ずつで5万円程度のコストですむという。
また、認知症の人が検知圏外に出たり、転倒事故などを起こしたりすると、関係者に電子メールが配信される。辻岡准教授は「地域全体で見守ることで家族の負担を減らせます。自治体での導入で目指したい」と語っている。