中小企業が多く加入する日本商工会議所は大企業の大学生の採用選考について、面接解禁日を現行(2015年)の8月から2016年は6月へと2か月前倒しするよう求める提言をまとめた。
日商の三村明夫会頭が2015年10月15日の記者会見で明らかにした。「来年から適用すべき」として、現在の3年生が入社する2017年春採用からの変更を政府や経団連に求めるという。
「学業専念」は有名無実、シューカツは長期化
大学生の就職活動をめぐっては、安倍政権が「学生を学業に専念させる」として経団連に見直しを求めたのがきっかけとなり、2015年から会社説明会を3年生の12月から3月へと3か月、面接を4年生の4月から8月へと4か月、それぞれ繰り下げた。これに対し、内定解禁はこれまで通り4年生の10月で据え置かれた。
このルール変更は、就活の負担を減らし、学業に専念する時間を増増やそうという狙いだった。だが、皮肉なことに選考期間は大幅に短縮されたにもかかわらず、学生、企業の双方から「就活が長期化した」と指摘する声が相次いだ。
この矛盾した現象は、なぜ起きたのか。まずは、優秀な学生を逃したくないという一部の大企業が大学3年生の夏ごろからインターンシップという形で「囲い込み」を始めたからだ。大学側も「インターンに行った方がいい」と学生の尻をたたき、焦る学生も春から活動を開始するようになった。それまでなら秋以降にスタートしていた活動が前倒しされ、就活も実質的にスタートが早まったというわけだ。
さらに、従来は4~6月にピークを迎えていた就活が、ルールを守る「本命の一流企業」(有名私大4年)の採用選考が8月以降にスタートしたため、実際のピークが後ろにずれることになり、結果として就活は長期化した。
当然のことながら、経団連に未加盟の外資系や新興の企業はルールに従わず、大企業に先駆けて採用活動を開始。大企業にもフライングする企業は少なくなく、インターンシップに参加しない学生でも、例年と同じ時期には活動を始めなければならなかったという。
あおりを食った中小企業、学生は「ルール関係ない」
一方で、ルール変更のあおりを食ったのが中小企業だった。これまでは大企業が一段落ついた後に中小企業の採用活動となっていたのが、今年は順番が逆転。大企業から内定をもらった学生が、先にもらっていた中小企業の内定を辞退するケースが増加し、追加募集しなければならなくなり、ここでも採用活動が長期化した。
中小企業の不満は大きく、その代表である日商の三村会頭は「このまま継続するのはまずいと思い、勇気をもって改定する提案をした」と面接解禁日の見直しを求めた。ただし、会社説明会の解禁日については2017年春採用については現行の3年生の3月のままで構わないとのスタンスで、2018年春採用からの就活について、政府や経団連などが検討会を設置し、改めて決めるように求めている。
日商の提案を受け、経団連の榊原定征会長も「一つのやり方だと思う」と述べ、見直しを検討する考えを示した。
こうした一連の「就活期間見直し」の報道を受け、就活を終えたばかりの現大学4年生からは「最初から変えなくてよかった」「来年もこのままでいい」「誰トクだったの?」と恨み節のような指摘が出る一方、影響を受ける現3年生からは「見直すなら急いで」といった切実な声と、「ルールなんてあまり関係ない」という冷ややかな意見が交錯している。