自動車メディアがスクープ合戦を繰り広げてきたトヨタ自動車のFRライトウェイトスポーツカーが、「第44回東京モーターショー2015」(一般公開2015年10月30日~11月8日、東京ビッグサイト)に参考出品されることになった。
「トヨタS-FR」と名づけられたこのコンセプトモデルは、トヨタがスバル(富士重工業)と共同開発した「86(ハチロク)」(スバル名は「BRZ」)の弟分で、東京が世界でのデビューとなる。ホンダが同じく出品する本格スポーツカー、新型NSXと並び、人気を二分するのは間違いない。限定された市場でトヨタが巻き返しを図れるのか、他社のスポーツカーとの食い合いも含めて久々にスポーツカーをめぐる動きが過熱しそうだ。
トヨタ「ハチロク」の弟分、ホンダの新NSXに対抗
今回の東京モーターショーには、トヨタが2015年末に市販する次期プリウスのほか、ホンダが2015年度内の市販を目指す燃料電池自動車(FCV)を展示するなど、話題には事欠かないが、自動車雑誌などの注目度は圧倒的にトヨタS-FRに集中している。
S-FRは往年のスポーツカー、トヨタS800を彷彿とさせるスタイリングで、全長3990ミリ、全幅1695ミリ、全高1320ミリと、86/BRZよりも一回り以上コンパクトになっている。エンジンをフロントミッドシップに搭載し、6速マニュアルミッションで後輪を駆動する。トヨタは「自分の意のままにクルマが反応し、日常生活の中でもクルマと対話ができる楽しさを追い求めた」とコメントしている。
エンジンや車両重量は未公表だが、「エンジンは1.2リッターターボか1.5リッターで、車両重量は1トンを切る。車両価格は150万~170万円で、2017年に発売する」との一部報道もある。
日本ではミニバンや軽自動車ばかりが売れ、「スポーツカー冬の時代」が続いたが、トヨタとスバルが86/BRZを共同開発して2012年春に発売以来、潮目が変わった。ダイハツがコペンを復活させ、ホンダがS660を発売したほか、マツダがロードスターをフルモデルチェンジするなど、スポーツカー市場が活気を取り戻したのだ。86/BRZのヒットに対抗し、日産がFRスポーツを復活させるという情報も自動車メディアを賑わした。
しかし、トヨタが86/BRZに加え、S-FRをリリースすることは、カニバリズム(市場の奪い合い)とならないか、一抹の不安はある。国内の販売台数(日本自動車販売協会連合会調べ)は、トヨタ86が6月718台、7月674台、8月541台、スバルBRZが6月234台、7月149台、8月156台となっている。デビュー当初の目標(国内月販で86が1000台、BRZが450台)には届かないものの、デビューから3年余が経過したモデルとしては、上出来の成績だろう。米国では8月に86(サイオンFR-S)が960台、BRZが498台売れており、日米で両車合計2155台を販売している。