「ゴックン、ゴックン、ゴックン!」「プハ~ッ!きくぅ~!」。一気に飲み干す生の大ジョッキ。和服美人が楚々と銚子を傾ける日本酒に比べ、ビールの飲み方は、CMからして豪快だ。その結果、当然待ち受ける豪快なビールっ腹。
ビールを飲むと太るという都市伝説はやっぱりホント?
ビールに罪なし、諸悪の根源はコイツだ
結論からいうと、ビール自身には罪はない。真犯人はほかにいるが、ビールにも多少の落ち度があるのだ。まずビールのカロリーをみてみよう。大瓶1本(633ミリリットル)で246キロカロリー。ご飯なら丼1杯、食パンなら2枚半(1巾8枚)のカロリーに相当する。しかし、あまり心配はいらない。ビールのカロリーの3分の2はアルコールだ。アルコールは「エンプティカロリー(空のカロリー)」といわれ、体内に入ると肝臓で分解されて水と二酸化炭素と熱エネルギーに変わる。ビールを飲むとオシッコがちかくなり、体がポカポカするのはこのためだ。
ただし、3分の1の糖質など「原材料分」のカロリー(89キロカロリー)は、脂肪・脂質として蓄えられてしまう。だから、居酒屋にはないだろうが、本当は「糖分カット」「糖質ゼロ」のビールの方がお勧めなのだ。ちなみに蒸留酒の焼酎やウィスキーは、ビールよりもアルコール度数が高くてカロリーも高いが、「原材料分」がゼロなので、体内に残るカロリーもゼロである。太らずに酔っぱらいたい向きにはこっちの方がもっとよい。
では、「ビールっ腹説」の真犯人は誰なのだろうか。言わずと知れた「つまみ」である。「ビールの落ち度」を後述するが、ビールを飲むと、ほかのアルコール飲料以上に食欲が大いに増進し、ついつい高カロリーのつまみを食べたくなる宿命があるのだ。ビアガーデンで注文したくなるつまみを思い出してみよう。鶏のから揚げやフライドポテト、焼き餃子など揚げ物やしょっぱい物を食べたくなるだろう。これら人気のつまみの標準的なカロリー(1人前)をまとめると――。
焼き鳥盛り合わせ(たれ・5本)約553キロカロリー
鶏のから揚げ(5個)約400 キロカロリー
焼き餃子(4個)約395 キロカロリー
フライドポテト(150グラム)252 キロカロリー
焼き肉(カルビ・100グラム)526 キロカロリー
ソース焼きそば(1皿)580 キロカロリー
コロッケ(2個)440 キロカロリー
スパゲッティ(1皿)710 キロカロリー
どれか3品を頼んで生の大ジョッキを2~3杯飲むと、軽く2000 キロカロリーを超えてしまう。
ビールの醍醐味「キレ」「コク」「のど越し」が実はアブナイ
なぜ、ビールを飲むと脂っこい物や塩分の多い物を食べたくなるのか? それは、ビールの醍醐味としてよくいわれる「キレがある」「コクがある」「のど越しさわやか」に関係があるのだ。「キレ」「コク」「のど越し」は、わかったようでよくわからないキャッチフレーズだが、要は、麦芽の発酵で適度な炭酸が混じり、ホップの苦み成分がほどよく、味がスッキリしていることだ。ビールの炭酸ガスとホップの苦み成分には胃腸の働きを活発にする効果がある。食欲のない高齢者に適度なビールを勧める「ビール健康法」を推奨する専門医もいるほどで、この飲むと食欲が大いにわくことが「ビールの落ち度」なのだ。
また、ビールには塩分がほとんど含まれていない。ビールがすすみ尿をどんどん排出すると体内が塩分不足になり、しょっぱい物を食べて塩分を補給したくなるのだ。一方、さらに酔いが進むと炭水化物も欲しくなる。ビールに限らずアルコール類一般の現象だが、アルコールが体内で分解すると体温が上がる。すると血液中の糖分が不足し、糖分の補給として炭水化物がほしくなる。飲むと、「締め」でラーメンやお茶漬けを食べたくなるのは、そのためだ。
つまみを食べる順番は前半に野菜、肉魚は後半
では、太らないビールの飲み方はあるのだろうか。脂っこい物をやめて、ヘルシーなつまみを注文することだ。揚げ物ではなくサラダ、肉ではなく魚(刺し身)を食べたい。たとえば、こんなつまみだ(カロリーは標準的な1人前)。
枝豆 80キロカロリー
冷奴 120キロカロリー
イカ(100グラム)125キロカロリー
タコ(100グラム)100キロカロリー
マグロ赤身(100グラム)127キロカロリー
大根サラダ 64キロカロリー
ごぼうサラダ 160キロカロリー
キムチ(1鉢)60キロカロリー
このほか、野菜スティックに軽く塩を振って食べるのもお勧めだ。食べる順番も考えたい。前半に枝豆、冷やしトマト、サラダなど食物繊維を多く含む物を食べると、食物繊維やビタミンB群がアルコールの代謝を助けてくれて、悪酔いしない。そして、ゆっくりほどほどの量を楽しもう。注文がまだ何も来ていないのにジョッキをあけるなど論外である。