老舗フルーツパーラー「京橋千疋屋 京橋本店」(東京都中央区)でお客が塩素入りの水を飲んで体調不良になった問題をめぐり、ネットでは「なんでまた塩素が混入したんだ」などと不思議がる声が出ている。
検出された塩素は水道水の500倍と、漂白液に使われてもおかしくないほど高い濃度だった。
保健所「ピッチャーの水に塩素が含まれていたと考えるのが合理的」
2015年10月22日午後のティータイム、大通りに面する京橋千疋屋京橋本店に客の姿はなかった。店頭の窓に「一階店舗は十月二十三日(金曜)迄休業させて頂きます」と書かれた貼り紙が掲示され、淡い照明の灯った店内はひっそりしている。ときおり通りを行き交う人が足を止め、店頭の貼り紙をじっと見つめたり、窓越しに店内を覗きこんだりする。
10月15日、創業130年以上の老舗を事故が襲った。その日の11時頃、来店した20~30代の女性客5人が店で出された水を飲み、舌やのどの痛みを店員に訴えた。店が独自に検査機関を通じて調べたところ、その水から水道水の500倍という高濃度の塩素が検出された。店は17日から営業を自粛。保健所も21日、23日までの営業停止命令を店に出した。警視庁は店員に話を聞くなどして、詳しい混入経緯を調べている。
水は店で普段使われているプラスチック製のピッチャーから注がれた。塩素はピッチャーの水に含まれていたのか、それともコップに付着していたのか。中央区保健所の職員はJ-CASTニュースの取材に、「混入経緯は分かっていませんが、ピッチャーの水に含まれていたと考える方が合理的ではないでしょうか」と答えた。
検出された塩素は、「漂白液」として十分使用できる濃度
職員によると、5人の飲んだ水は前に入店していたグループと別の新しいピッチャーから注がれたという。そして、5人は全員体調不良を訴えている。こうした状況を見る限り、確かにピッチャーの水にもともと塩素が含まれていたと考えてもおかしくない。
検出された塩素の濃度は500ppm。キッチン用洗剤(約4~6万ppm)を100倍に希釈した溶液に近く、漂白液として十分使用できる。プールの水(0.4ppm以上)と比較しても、その濃さは際立つ。職員も「ゆっくり口を近づけると、明らかに塩素臭さを感じるはずです。うちの職員も同じ濃度の溶液を作ってみましたが、やはり全員『臭い』と話していました」と話す。
ツイッターにも
「顔を近づけたら『うッ!臭ッ!』ってならないのかしら?」
「なんでまた混入したんだ」
といった疑問が相次いで寄せられている。ただ、これほど高濃度の塩素が含まれた水がピッチャーに入っていた理由は、分かっていない。
実は2013年3月にも、京橋千疋屋とは違う飲食店で同様の事故が起こっている。大阪府豊中市のドーナツ店「ミスタードーナツ 豊中駅前ショップ」で飲用水を飲んだ客3人が体調不良を訴えた。この時、飲み残しの水から検出された塩素の濃度は600ppmと今回より高く、後に運営会社は水で薄めた漂白液を誤って提供したと発表している。