野田氏の元私設秘書の覚醒剤事件がきっかけ
こうして膠着状態に陥ったと思われたが、ここにきて、官邸主導で軽減税率の導入へ事態が大きく動いた。この間の安倍官邸の動きは、まさに一気呵成と言える素早さだった。
元々、自民党税調は業界団体の利害がひしめく税制の調整役を担ってきた。「税制のプロ」を自任するベテラン議員が力を持ち、小泉純一郎首相時代ですら、実力者の山中貞則党税調最高顧問(当時)を首相自ら訪ねて話を通したほどだ。
そんな力があるからこそ、族議員の野放図な要求にブレーキをかけ、財政事情に目配りするといったバランス感覚を働かせもしてきた。安倍政権でも、重要政策として打ち出した法人税減税の議論で、最終的に税率引き下げを認めたが、税収の確保などを主張し、安倍首相には煙たい存在だった。
軽減税率をめぐって、9月末の内閣改造を挟み、水面下で綱引きが続く中、事態が動くきっかけになったのが、10月7日に発覚した野田氏の元私設秘書(39)の覚醒剤取締法違反(使用)容疑での逮捕。官邸が一気に攻勢に出て、10日に野田氏の更迭・宮沢氏の会長起用を首相主導で固めると、11日には菅義偉官房長官がNHKの報道番組で「(軽減税率は)自民党の選挙公約であり、与党の間の連立合意でもある」と打ち上げ、14日、安倍首相が宮沢税調会長を官邸に呼んで軽減税率を指示し、流れが決まった。