グラビアページに江戸時代の「春画」を掲載したとして、週刊ポスト(小学館)など週刊誌4誌の編集長が警視庁から個別に呼び出され、口頭で「指導」を受けた。だが、春画掲載が原因で編集長が「休養」することになった週刊文春は、この4誌には含まれていなかった。
4誌が問題視されたのは、春画を掲載した同じ号にヌード写真を掲載したことが原因のようだ。一方、ヌードを掲載しなかった文春は「おとがめなし」だった。その判断基準はいかにも分かりにくい。
「ポスト」は16ページの小冊子、「現代」は8ページの袋とじ
各紙が2015年10月19日に報じたところによると、警視庁は8月から9月にかけて週刊ポスト以外にも週刊現代(講談社)、「アサヒ芸能」(徳間書店)と「週刊大衆」(双葉社)を「指導」した。
現時点で、警視庁はJ-CASTニュースの取材に対してどの記事が指導の対象になったかを明かしていない。ただ、ここ数か月では、週刊ポストが8月21・28日号で「日本が誇る『春画の秘宝』」と題して、袋とじの中に43作品を収録した16ページの小冊子をつけた。週刊現代は9月19日号で、「日本初公開!殿様が愛した『春画』」と題し、袋とじで8ページの特集を組んでいる。こうした記事が「指導」の対象になったとみられる。
一方で、「週刊文春」(文藝春秋)も10月8日号で「春画入門 空前のブーム到来!」と題した特集を載せている。これら3誌の特集は、永青文庫で開かれている春画展の内容を紹介しており、永青文庫理事長でもある細川護煕元首相がその意義を強調するコメントを寄せているという点で共通している。だが、警察の判断は分かれた。
なお、文春は、春画のグラビアが「読者の信頼を裏切ることになった」として編集長を3か月「休養」させているが、読者や警察の指摘が原因ではない「社内判断」だと説明している。
ポスト編集長もこの1年に2回、呼び出しを受けた
各紙によると、判断の分かれ目になったのは、同じ号に掲載されていたヌード写真だ。確かに文春にはヌード写真は載っていないのに対して、ポスト・現代には
「『豊満』の研究」(週刊ポスト)
「奥田瑛二との濡れ場が話題 不二子『迫真』」(週刊現代)
といったヘアヌードが載っている。これらのヌードが載ることで「わいせつ性が強調される」というのが警視庁の言い分のようだが、いかにも分かりにくい。
わいせつ事件に詳しい奥村徹弁護士は、今回の判断を
「同じ画像でもエロい切り口で扱うとわいせつで、芸術とか学術で扱うとわいせつではなくなるというのです」
とみる。画像そのものの内容だけではなく、それが掲載された文脈を含めて判断する、ということのようだ。ただ、すでに紹介したように、現代、ポストともに春画の芸術的側面を強調した誌面になっている。ヌード写真を「エロい切り口」で掲載した影響が春画に及んだ、という可能性もある。
「指導」を受けた側も困惑気味だ。ポストは、10月30日号で、
「春画は『わいせつ物』か 世界に誇るべき『日本の文化』か」
と題した特集を組み、その中で
「警視庁は春画を『わいせつ図画』だとみなし、本誌を含め春画を掲載した週刊誌数誌を呼び出し『指導』を行なっている。本誌編集長もこの1年に2回、呼び出しを受けた」
などと2度にわたって警視庁から呼び出しを受けたことを明らかにしている。だが、警視庁が「指導」に踏み切る基準は、やはりはっきりしない。
「その際『以前から10数回にわたり本誌は春画を掲載してきたが、このような呼び出しを受けたことはない。警視庁の中で方針の変更があったのか』と問うたが、明確な返答はなかった」