深夜のガッツリ食事は悪いことだらけ このままだと「太る未来」しか描けない

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   36歳の会社員、木村清志さん(仮名、以下「キヨシさん」)が一念発起してダイエットを開始し、昼食をヘルシーなメニューに変えてから短期間で2キロ減と結果を出したものの、体脂肪率が逆に上昇してしまった。

   揚げ物も甘いものも食べていないのになぜ――。どうやら食事の中身だけでなく、食生活自体を見直す必要が出てきた。

体が軽くなった気がしない、そして突然の腰痛

   キヨシさん、登場するなり1枚の写真を見せてくれた。

編集部「今週の体重ですね、どれどれ...おお、80キロ切ってるじゃないですか」
表示されていた数字は79.8キロ。身長178センチ、体重83.5キロでスタートしてから1か月弱でここまで成果が出るとは、編集部も予想外だった。
編集部「もしかしてベルトの穴も1つ分縮まったんじゃないですか」
キヨシさん「あ、僕、スウェットパンツしかはかないんで、ベルト使わないんですよ」
編集部「......で、でも体の変化は何か感じているでしょう」
キヨシさん「いやあ、実は体が軽くなったという気が全然しないんです」

   心配していた体脂肪率も、前回報告のあった23.5%から21.7%と数値が改善していた。それでも、特に爽快感が増したといったポジティブな感覚はあまり出てきていないという。

   もしかしたら、仕事の忙しさが原因かもしれない。実は一時的にひどい腰痛に悩まされたそうだ。床に落ちているゴミを拾おうとしてかがんだ瞬間、腰に激痛が走って2、3日は歩くのが億劫だったと明かす。「急にダイエットして、筋力が衰えたんですかね」と不安顔だ。

   帰宅時間は相変わらず遅く、夕食の時間も23時ごろと深夜にさしかかる。昼食以降は一切間食をやめているせいか、夜になれば空腹度120パーセントだ。この週はカレーライスやマーボー丼と比較的「ガッツリメニュー」が夕食の食卓に並んだが、すべて完食していた。

   一方で、体重が落ちているという事実に、キヨシさんは今のダイエットスタイルに自信をもってきた。

キヨシさん「間食のお菓子を抜いただけで、もう4キロ近く減量できました。昼食を変えた効果もあるでしょうが、甘いものや炭酸飲料の影響が大きかったんだなと思うんです」
体重は減っているが、夜遅くまでの仕事が続くともしかして...(写真はイメージ)
体重は減っているが、夜遅くまでの仕事が続くともしかして...(写真はイメージ)

脂肪をため込む性質のタンパク質は夜中に最大量

   だが管理栄養士に取材すると、今のキヨシさんの食生活は決して好ましくないと分かった。最大の問題点は、深夜のガッツリ食事にある。

   まず夜遅くに食事をすると、朝になっても空腹にならず朝食を抜きがちになり、1日の食事の回数が1回減る。実は食事の際にもエネルギーが消費される。これは「食事誘導熱産生」と呼ばれるが、1回分なくなれば当然、食事誘導熱産生もその分起きない。1日の食事が3回と2回を比べれば、2回の方がエネルギー消費が少ないので、同じエネルギー摂取量でも朝食を食べない方が太りやすくなる。

   次に、睡眠不足のリスクが上昇し、食欲抑制ホルモン(レプチン)の働きが減退する半面、食欲促進ホルモン(グレリン)の働きは活発化する。グレリンには、脂肪蓄積作用と体脂肪の利用抑制作用があるため、肥満が促進される。睡眠不足が慢性化すれば、耐糖能やインスリンの感受性を低下させてさらに肥満が進む恐れがあるという。

   脂肪をため込む性質のあるタンパク質「BMAL1」も、夜遅くの食事で増える。脂肪細胞内のBMAL1の量は、1日のうちで22時から夜中2時の時間帯に最も多くなるため、脂質蓄積を増進する可能性があるのだ。

   さらに、慢性的なエネルギー摂取過剰になると、規則正しい生活のかぎとなる生体リズムが崩れ、エネルギー過剰に拍車がかかる。

   減量が成功しているはずだったキヨシさん、これを聞いてビックリだ。現状の夜の食事スタイルを続けていては、どう考えても肥満化が進行するシナリオしか描けないというのが、専門家の指摘だった。

キヨシさん「いやあ、こんなことになるとは思いませんでした。生活のリズムを変えないといけませんね。でも困ったなあ。仕事を切り上げて早く帰るわけにはいかないし、と言って家で食事しなければ家族に申し訳ないし...」
空腹な時にこれが差し出されたら、深夜でもついペロリ
空腹な時にこれが差し出されたら、深夜でもついペロリ

おにぎりやサンドイッチを夕方に食べて「分食」を

   ひとつの解決策を、管理栄養士が示してくれた。キーワードは「分食」だ。

   キヨシさんの場合、帰宅後の夕食は23時と遅い。それなら帰宅前、17~20時に補助的な食事(捕食)をとり、夜遅くの夕食と「合わせ技」で1食分とするのだ。捕食には、おにぎりやサンドイッチといった炭水化物を勧める。素焼きのナッツやシリアルバー、バナナやヨーグルトもよい。コンビニエンスストアで比較的入手しやすいものばかりだ。

   おにぎりは発芽米や雑穀米を、サンドイッチも胚芽パンを使ってつくられたものが理想的だという。この方が血糖値の上昇が緩やかなので、太りにくくなるためだ。

   捕食をとったら、帰宅後の食事は「炭水化物抜き」がベストで、無理ならご飯は半膳分を茶漬けや雑炊にする。合わせて、豆腐や卵といったタンパク質と野菜が入ったスープのように暖かい汁物が欲しい。逆に揚げ物や炒め物といった脂質の多いメニューは避ける。

   うなずきながらメモをとるキヨシさん。「夕方はお腹すかないんだよなあ」「野菜はホント、苦手で...」とボヤキ節もちらほら聞こえてきた。ただ、明るいきざしもあった。「お勧めの食材」として管理栄養士が挙げたきのこ類やワカメ、また野菜でもネギやトマトは大好物というのだ。「これなら余裕で食べられます」と、ようやく笑顔も見られた。

   晩ご飯のスタイルを変え、いまだに苦戦している朝食も食べるようにする――。これを今回の宿題として、キヨシさんはチャレンジを約束した。

編集部「夕食メニューの変更は、奥様の協力が欠かせませんね」
キヨシさん「相談してみます。あと、捕食を買う分の『予算確保』も交渉しないと...」

   大丈夫ですよ、キヨシさんダイエットに挑戦する夫を、奥様が応援しないわけがありません。でも「予算要求」が通っても、そのお金でお菓子を買ったりしないでくださいね。

食事のスタイルを変えられるか
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