脂肪をため込む性質のタンパク質は夜中に最大量
だが管理栄養士に取材すると、今のキヨシさんの食生活は決して好ましくないと分かった。最大の問題点は、深夜のガッツリ食事にある。
まず夜遅くに食事をすると、朝になっても空腹にならず朝食を抜きがちになり、1日の食事の回数が1回減る。実は食事の際にもエネルギーが消費される。これは「食事誘導熱産生」と呼ばれるが、1回分なくなれば当然、食事誘導熱産生もその分起きない。1日の食事が3回と2回を比べれば、2回の方がエネルギー消費が少ないので、同じエネルギー摂取量でも朝食を食べない方が太りやすくなる。
次に、睡眠不足のリスクが上昇し、食欲抑制ホルモン(レプチン)の働きが減退する半面、食欲促進ホルモン(グレリン)の働きは活発化する。グレリンには、脂肪蓄積作用と体脂肪の利用抑制作用があるため、肥満が促進される。睡眠不足が慢性化すれば、耐糖能やインスリンの感受性を低下させてさらに肥満が進む恐れがあるという。
脂肪をため込む性質のあるタンパク質「BMAL1」も、夜遅くの食事で増える。脂肪細胞内のBMAL1の量は、1日のうちで22時から夜中2時の時間帯に最も多くなるため、脂質蓄積を増進する可能性があるのだ。
さらに、慢性的なエネルギー摂取過剰になると、規則正しい生活のかぎとなる生体リズムが崩れ、エネルギー過剰に拍車がかかる。
減量が成功しているはずだったキヨシさん、これを聞いてビックリだ。現状の夜の食事スタイルを続けていては、どう考えても肥満化が進行するシナリオしか描けないというのが、専門家の指摘だった。
キヨシさん「いやあ、こんなことになるとは思いませんでした。生活のリズムを変えないといけませんね。でも困ったなあ。仕事を切り上げて早く帰るわけにはいかないし、と言って家で食事しなければ家族に申し訳ないし...」