「日産はルノーの財布」なのか 仏政府が絡み、三つ巴の「押し合い」

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個人株主から「ルノー優位の関係を見直すべきだ」

   日産の立場はさらに複雑だ。ルノーに出資していても議決権もない「不平等条約」状態にあることに、かねて不満の声があり、15年6月の日産株主総会でも出席した個人株主から「ルノー優位の関係を見直すべきだ」との声が出た。経営難のころならともかく、日産の業績が上回っているだけに、株主の不満は強まる一方だ。経営的にも、前記のマイクラ次期モデルをルノーのパリ近郊の工場で生産する問題でも、純粋に日産の利益とは相いれない決定を強いられた面がある。ルノーの持ち株比率引き下げと保有ルノー株の議決権行使という今回の資本関係の見直しが実現すれば、ルノーとの力関係で日産が押し戻す形になるとの期待がある。

   ただし、そうした緊張関係をはらみつつも、2社間の関係が、これを通じて薄まるとみる関係者はほとんどいない。

   2社のCEOを兼務するゴーン氏はこの間、「規模がないと多くの戦いに敗れてしまう」と繰りかえし述べている通り、販売台数は2社計で850万台と、トヨタ自動車、フォルクスワーゲン(VW)、ゼネラルモーターズ(GM)に続く4位グループにあり、この規模は今後の生き残りに不可欠だ。だからこそ、2社は調達や研究開発から人事まで、統合を着々と進めてきた。

   ただし、ゴーン氏が「資本関係にかかわらず、両社は対等なパートナー」と強調しようとも、時に利益相反にも見える関係は微妙であり、同氏あればこそ、まとまってこられたというのが、大方の見方だ。仏政府がルノーへの発言力を強め、ルノーを通じて日産の経営にも口を出すような事態になれば、2社の力関係に激震が走る可能性も否定できない。

   日産側は当面、ゴーン氏と仏政府の神経戦を見守るしかなさそうだ。

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